2011年9月10日(土) UMISAKURA MUSIC FESTIVAL 2011 FINAL「UNITE!」
【場 所】江の島展望灯台サンセットテラス
【出演者】朝倉真司・寺岡信芳・石嶺聡子・伊東ミキオ・上中丈弥(THEイナズマ戦隊)・梅津和時・ウルフルケイスケ・中川敬(ソウルフラワー・ユニオン)・BanBanBazar・三宅伸治・山口洋(HEAT WAVE)・リクオ
【時間】開場13:00/開演13:30
「海さくら」は江ノ島灯台の麓にある展望デッキで行われる音楽フェス。ローカルなイベントだし、フェスとはいってもその規模はとても小さい。でも、僕にとっては、これに行かないと夏の終わりを迎えられないぐらいに大事なイベントなのだ。なんと言っても、このフェスはロケーションが抜群に素晴らしい。周囲360℃をぐるりと海に囲まれ、潮風に肌をさらしながら音楽を楽しむ。靴なんか脱いじゃって、裸足でウッドデッキに座り込んじゃう。手には冷えたビールと地元の美味しいフード。これだけでもう最高でしょう?手作り感満載の部分もあるのだが、そこがまたいいのだ。
リクオはこのイベントの音楽プロデューサーという役を担っている。出演者もリクオと何らかのつながりのある人が多いのだが、今年はなぜかR&R系の人が多く集まった。女性の出演者は石嶺聡子ちゃんだけ。だから、行くまでは異様に男臭いイベントになりそうだ、なんて思ってたんですよ、実は(笑)。でも、いざ始まってみたら確かに男臭くはあったけど、決して暑苦しくはなかったな(笑)。っていうか、潮風とR&Rって相性ばっちりなんですね!
この日、三宅伸ちゃんは、MCで「今日は反原発の歌を歌おうと思っていたんだけど、こっちにします」と言って「何にもなかった日」を演った。これがこの日のムードをよく表していたと思う。大自然に包まれた素晴らしいシチュエーションに、ミュージシャンも観客も、前向きに今を楽しもうという気分にさせられたんじゃないのかなあ…。
この日、僕は早朝にランニングした後、ちょっと足を痛めてしまっていたので、江ノ島の灯台を登るのがけっこうしんどく、おかげでオープニングで演奏されたという梅津和時さんのサックスソロは聞くことができなかった。知り合いの話だと、「東北」という新曲で涙が出るほど素晴らしかったそうだ。畜生、やっぱりエスカーに乗っとくべきだった(苦笑)。
この日のイベントは、UNITEという副題がついていたとおり、誰かのステージをベースに、ゲストとして誰かを呼び込み、数曲をジョイントしていくという流れがあった。誰それのパートっていうタイムテーブルで進むわけじゃなく、一本のイベント全体として音楽をシェアしてるフィーリングが感じられ、これはとても心地良いと思った。音楽フェスって本来こうあるべきなんじゃないだろうか。
心に残った場面はいくつもある。
ますは三宅伸治。伸ちゃんのステージは掛値なしに素晴らしかった。伸ちゃんはイイ曲がいっぱいある。歌もギターも最高だ。だけど、常連さんの多いハコでの伸ちゃんのライブはけっこう苦手なんだよなあ、オレ…。ま、その理由はそういう場でライブを観た事のある人なら、なんとなくわかると思う。でも、この日の開放された空間での伸ちゃんは最高だった。お客さんも自然に立ち上がって踊りだす。海風に吹かれながら、ゴキゲンなR&Rに身を委ねるのはなんと素敵な時間だったろう…。
先に書いた「何にもなかった日」も良かったが、僕は続けて歌われたボブ・マーリーのカバー「NO WOMAN, NO CRY」にぐっときた。伸ちゃんは、サビの歌詞を“きっと上手くいくよ、もう泣かないで…”って歌ってた。3.11以降、心配の種はたくさんある。けれど、とりあえず今こうしてレゲエのリズムで踊っていられる幸せをしみじみと感じた。
青空の下で歌われた「ベートーベンをぶっ飛ばせ!」はもう最高!伸ちゃんはギターを抱えてデッキのはるか後方まで客席乱入を敢行。ここまでやっちゃうんだ!と思わせてくれる心意気。改めて素晴らしいパフォーマーだと思った。
伸ちゃんは、ウルフルケイスケのステージにゲストとして呼ばれたんだけど、この2人はギタリスト同士だし音楽的嗜好も似ていて相性ばっちり。「スィート・リトル・ロックンローラー」のカバーなんて、まるでニュー・バーバリアンズのロニーとキースを観るよう。一部の最後は、伊東ミキオや上中丈弥も加わっての大R&R大会になった。
二部のトップバッターは、BanBanBazar。一部でガンガンに盛り上がった後なのに、さらっと出てきていつものとぼけたジャイブをプレイする、そのユルさが最高(笑)。まあ、今日みたいなシチュエーションだと、ビヤガーデンのハコバンみたいなタッチがなくもないけど(苦笑)。
二部は中川敬も登場。僕はソロの中川敬がどんなスタイルで演るのか、ちょっと興味があった。よもや弾き語りはないと思ってはいたけど(笑)。案の定、リクオがサポートに。中川、ちょっと緊張してたみたいだけど、最近出たソロアルバム収録曲を中心に数曲を披露。浅川マキさんのカバー「少年」が心に残った。
山口洋は中川敬の後にふらっと出てきて、「汚れた空気を浄化します…」とか何とか言いながら(苦笑)、石嶺聡子とのデュオで何曲か演奏。「花」は観客が固唾を飲んで見守るほど素晴らしかった。ソロになると、ヒロシは自虐MCを連発しながらアコギで弾き語り、ま、こういうイベントでのいつものスタイルだ。でも、海風を受けながらの「STILL BURNING」や「I HAVE NO TIME」はやっぱりイイ。澄んだアコギの音色が江ノ島の空高く駆け上がっていくようだった。
そして総合プロデューサーのリクオ。もうなんと言ったらいいのか、さすがのステージング。様々な場所で、様々な形態でのリクオのパフォーマンスを観てきているけれど、毎年「海さくら」で演奏する時のリクオは、その年のリクオの最新スタイルが一番良く出ているように思う。
梅津さんとのデュオは沁みた。特に、忌野清志郎作の「胸が痛いよ」は、もうほとんどスローバラードの世界。梅津さんのサックスソロはむせび泣き、リクオの歌には万感の思いが込められていた。この時、江ノ島はトワイライトタイム。ステージの後方には美しい夕焼けが広がり、墨絵のような富士山のシルエットが浮かび上がっていた。曲が終わると2人もしばし演奏を止め、観客と一緒にその夢のような光景を堪能する。
そして、リクオはこの日の出演者を次々とステージに呼び込んでいく。心に残ったのは、BanBanBazarとともに演奏した有山じゅんじのカバー「梅田からナンバまで」。そして三宅伸ちゃんが加わっての「いいことばかりはありゃしない」と「雨上がりの夜空に」。今から考えれば、リクオ・梅津さん・伸ちゃんとくれば、RC・清志郎関連の曲が演奏されるのは十分に予想できたはずなんだけど、この時の僕はまったくそれは抜けていた。なので、不意に「いいことばかり…」が演奏された時は、驚いてしまった。しかも、これが涙が出そうなぐらいにしみじみ良かったのだ…。「梅田から…」に続いて演奏されたというのも、日本のロック・R&Bのミュージシャンズ・ミュージシャンをリスペクトしていくタッチがあって素晴らしかったと僕は思う。
「雨上がりの夜空に」はもう、ありし日の清志郎のライブみたいな盛り上がり。観客誰もが踊っていた。こんな素晴らしいメンツで、こんな素晴らしいシチュエーションで、この曲が聴けるなんて…。ステージ上のミュージシャンも笑顔が弾けていた。オレ、気配を感じていた。この日、清志郎は間違いなくここに来てたと思う。
アンコールでは、被災地の避難所で子どもからお年寄りまで、最も盛り上がったという「アンパンマン・マーチ」、それに、中川敬と山口洋が並んで立っての「満月の夕」が演奏された。「満月の夕」は、共作者の中川敬と山口洋それぞれが少し異なる歌詞で歌っているが、この日は二つの歌詞を合わせて歌われた特別バージョン。2人がついにこの曲を一緒に歌った。そこに立ち会えただけでも感慨深かった。
最後の最後は、出演者全員がステージに上がって、友部正人の日本語詞バージョンで「アイ・シャル・ビー・リリースト」が演奏される。もう、なんと言ったらいいのか…。素晴らしかった。この日は先人が残したカバー曲もいくつか演奏されたが、どれもが限りないリスペクトと愛に溢れていた。
僕自身も、先人が作った日本のロック、R&Bの系譜を引き継いで今ここに立っているんだなあ、なんてことを感じさせられたイベントでもあった。江ノ島の自然に抱かれ、素晴らしい音楽を受け取り、なんだか3.11後の世界を生きる元気をいっぱいもらったような気持ちになったなあ…。夏の終わりに相応しい、ほんとうに素晴らしい一日だったと思う。
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