サッカー

2012年8月29日 (水)

欧州サッカー開幕

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まだまだ残暑は厳しいけど、8月下旬になっていよいよヨーロッパではサッカーシーズンが始まった。
これから来年の春にかけて、僕は遠いヨーロッパに思いを馳せながらテレビで試合を追いかける日々を送ることになる。これまでだと、僕の観戦スケジュールは9月末から始まるチャンピオンズリーグを中心に組まれ、毎週の各国リーグの気になるカードを加えていくパターンだった。そんなここ数年のパターンが、去年ぐらいから変化し始めている。言うまでもない。欧州の強豪クラブに、日本人選手が所属するようになったからだ。

去年はイタリアの超名門インテルで長友佑都が初めてフルシーズンを迎えた年だった。去年の長友はチーム全体が不調だったことも影響してか、現地マスコミの批判にさらされることも多く、波の激しいシーズンになってしまった。でも考えてみたら、結果的にはビッククラブで一シーズンぶっ続けでレギュラーを務めたことになるわけで、これはあの中田英寿ですら経験できなかったことだ。これだけでもとんでもなく素晴らしいことだと僕は思う。

そして僕の方は、気がついたら去年はインテルの公式戦をほとんど全部観てしまっていた(苦笑)。もう、バルサもガナーズも後回し。完全に観戦はインテル中心になってしまった。インテルのリーグ順位に一喜一憂し、試合が終わった瞬間から、もう次節の対戦カードを気にかけてしまう日々。そして、何よりもビッククラブで奮闘する日本人・長友の活躍ぶりが気になって気になってしょうがない…。そんなシーズンだった。

こんなことは、去年が初めての体験だったのだ。これまでも、一サッカーファンとしてプレイスタイルの好きなアーセナルやバルセロナあたりのスペクタクルなサッカーを充分に楽しんではいた。でも、正直言ってそれは今思えばちょっと他人事的な関わり方でもあったように思う。そりゃあ、バルサがレアルに負ければ悔しい。でも、悔しいけどレアルがバルサ以上に素晴らしいサッカーを展開してくれていれば、それはそれで良いサッカーを見れたことに満足感を覚える自分がいた。
だけど、チームに日本人選手がいるとなれば応援の本気度が全然違ってくるのだ。インテルは、長友が入ったその日から、僕にとって特別のクラブになってしまった。正直言うと、インテルのサッカーはあんまり僕の好きなスタイルではないのだけれど、もうスタイルがどうこうなんて言ってられない。気が付いたら、僕は俄かインテリスタになってしまっていた(笑)。結果的に、試合のほとんどを追っかけ、他にもお気に入りの選手ができ、監督の采配にまで思いを馳せてしまっていたんだから…。
今年はこの観戦ローテーションに香川真司の加入したマンチェスター・ユナイテッドが加わることになった。マンUはチャンピオンズリーグにも出場するから、ますます睡眠時間が短くなる(笑)。でも、これは嬉しい。うーん、楽しみだ!

幸いにして、長友も香川も開幕から堂々のスタメン入りを果たした。香川に至っては2節目でゴールまで決めてるんだから大したもの。長友にしても、新加入したカッサーノとのコンビネーションは良好のようで、一節目はフル出場。かなりいい動きをしていたと感じる。

不安材料がないわけではない。まず、香川は今のところ日本はもとより現地でも気持ち悪いぐらいに高い評価を得ているが、僕から見ればまだ全然だ。香川の持ち味は、相手ペナルティエリアに侵入した時の卓越したボールコントロールにあると思うのだが、それがほとんど見られていないではないか。だいたい、マンUというチームは外からの崩しばかり多用するんで、トップ下の香川にあまりいいボールが入ってこない。これは香川が味方の信頼をまだ完全には得られていないからなんじゃないだろうか?プレミア特有の荒っぽいフィジカルコンタクトに、華奢な日本人体系の香川が耐えられるのかも心配だ。
長友に関しては、一節目のような動きをシーズン中ずっと続けられれば、まず大丈夫だと思うんだけど、去年みたいに攻め上がりすぎて背後を突かれるようなことが目立つと、同じポジションの若い選手が移籍してきてるんで、あっという間にレギュラーの座を奪われるだろう。そう思うと、またハラハラしながらインテルの試合を見続けることになるんだろうなあ~(苦笑)。

でも、ほんとにこれって少し前までは考えられなかった夢のような状況なのだ。だって、ヨーロッパ最高レベルのリーグのこれまた超ビッククラブに、日本人が2人も所属してるんだよ。宮市や李だって実績挙げてビッククラブに移籍するかもしれない。もう欧州サッカーは海の向こうでやってるのを「鑑賞」するのではなく、「当事者」として感じるものとなったのだ。これが僕にはたまらなく嬉しい。
今の日本のサッカーファンってのは、ヨーロッパでいえばベルギーとかスェーデンのサッカーファンみたいなポジションなのでは?つまり、身近な国内リーグを観ながら、国外のレベルの高いリーグ、セリエやプレミアで活躍する自国の選手を熱く応援しているみたいな感じ。
やっと、やっとここまで来たのだ。夢なら覚めないで欲しい。サッカーを見ていると、本当に浮世の戯言なんて一時だけでも忘れていられる。今はあんまりいい時代ではないのかもしれないが、サッカーに関しては、確実に日本は進歩していると言い切れるのが、僕にはたまらなく嬉しいのだ。

2012年6月25日 (月)

夢の続き

「日本が本当に強くなるには、代表チームの選手の半分ぐらいがヨーロッパで活躍するようにならなければならない。」

これは、2002年の日韓ワールドカップが終わり、当時の日本代表監督だったフィリップ・トルシエが退任する時に言った言葉だ。当時、僕はこれを聞いてものすごくがっくりきたのを憶えている。だって、こんなの誰でもわかる話じゃないの。そして、それが現状ではほぼ不可能であることも…。そう、あの頃ヨーロッパで活躍していたのは、中田英寿と稲本潤一ぐらい。チームの半分が欧州で活躍する選手になるなんて、どう考えても夢のまた夢だった。だからこそ、僕らは外国人監督に何とかして欲しかったのだ。トルシエの発言は、それを言ったら身もふたもないと思われても仕方がないものだった。何が悲しくて最後の最後にこんなことを言われなきゃならないんだろう…。無性に空しかった。はっきり言って、これは決勝トーナメント初戦で敗退した指揮官の言い訳にしか聞こえなかった。

あれから僅か10年。気が付いたら、代表レギュラーの半数以上は欧州リーグでプレーするようになっていた。長友に至ってはインテルという超ビッククラブのレギュラーだし、本田の所属するCSKAモスクワや内田のシャルケだって欧州チャンピオンズリーグ常連の強豪クラブ。香川に至っては、ドルトムントの国内リーグ2期連続優勝の原動力になり、なんとマンチェスター・ユナイテッドというウルトラ・スペシャル・ベリー・ベリー・ビッククラブへの移籍を実力で勝ち取ってしまった。

はっきり言って、僕は自分の目が黒いうちにこんな時代が来るとは夢にも思わなかった。今、しみじみ思う。あの頃、トルシエの言ってたのはこういうことだったのかと…。
かつての日本代表は、当時ラモスがテレビ解説で怒りを籠めて言っていたように、本当の意味での“闘う集団”にはなってなかったと思う。チーム内ではいくつかの派閥があって一枚岩ではなかったとも聞いた。漏れ伝わるいくつかの醜聞は、なんだか弱い大学の体育会にありがちな、レギュラーと控えとの間での妬み嫉みと変わりないような気がして、なんとも情けなく思った。

今の代表には、そういうネガティブさが一切見当たらない。何よりも、末成り体育会みたいな暗さが全くないのが嬉しい。
何が彼らを変えたのかはわからない。が、一言でいうと、これはやっぱり世代が変わったということなのではないか。香川は89年生まれ。本田が86年。キャプテンの長谷部ですら84年生まれだ。若い!今の日本代表はとにかく若い。彼らを見ていると、若さとはなんと素晴らしいものかと思わずにはいられない。彼らは管理教育と言われた僕ら世代とは違う環境で少年時代を送ったはず。親の方にも受験一辺倒ではない選択肢があったのだろう。ゴルフの石川遼の清々しさとも共通するものを感じるのだが、彼らの集中力とひたむきな向上心は、ゆとり教育の良い面が反映されていると思う。好きなことを好きなだけやることができたからこそ、彼らは自分への厳しさを持ち得た。彼らのメンタリティからは、もはや人の目を気にしたり、チームメイトを嫉んだりする気持ちは微塵も生まれてこないのだろう。

もう一つ僕たちにとって幸せなのは、ザッケローニという名将との幸福な出会いだ。今の代表に彼の指導はハマりすぎるほどハマっている。けれど、これが10年前の日本代表だったらどうだっただろう?きっと消化不良を起こし、欧州組と国内組との間には壁ができてチームはバラバラになっていたかもしれない。彼が今、存分に采配を揮えるのは、実は今の代表選手たちのポテンシャルがもともと高いからでもあるのだ。ザッケローニは、今しかない絶妙のタイミングに日本にやって来た。それを見抜いた原博美氏にもリスペクトだ。

ザッケローニが監督になったのは、日本選手の欧州への窓を開く意味でも大きかったのではないか。長友のインテル移籍の際には、ザックがむこうのフロントに積極的に獲得を薦めたことが知られている。恐らくは他の日本選手の海外移籍の際にも、表に出ていないだけで何らかの口利きをしているのではないかと思う。それがやがては自分のチーム、日本代表に還元されることを、この名将は誰よりもよく知っているのだ。
そしてそれは選手たちのやる気を引き出しているに違いない。極東の島国でやっていても、認められればイタリアやドイツに行けるのだ…。この確信は何よりも選手のポテンシャルを引き上げるだろう。

今、ヨーロッパでは欧州一を決める選手権、EURO2012が行われている。明け方に海の向こうで行われている死闘に胸を熱くしながら、僕はつい“もし、ここに日本が出ていたらどのぐらい勝ち進んだろうか?”などと妄想してしまうのだ。それはなんて幸せなイマジネーションなのだろう…。こんな夜を迎えることができるなんて、10年前までは夢にも思わなかった。

今の日本代表を見ていると、野球の第一回WBCでの日本代表チームを思い出す。とにかく、チームとしてもこの集団はとても魅力的なのだ。アウェーでのオーストラリア戦を終え、帰国の途につく飛行機の中で、キャプテンの長谷部がサポーターに挨拶した時、本田はすかさず「マジメすぎるやろ!(笑)」と茶々を入れたそうだ。その様子を想像して思わず微笑んでしまうとともに、如何に今のチームに良い空気が流れているかを感じ、なんだかじんわりと涙ぐんでしまった。

僕たちは今、あの頃見た夢を目のあたりにしているのかもしれない。
夢なら覚めないで欲しい。僕はこの夢の続きが見たいのだ。香川がオールド・トラッフォードのピッチに立つところが見たい。本田がプレミアやリーガ・エスパニョーラで躍動する姿を見たい。そして、何よりもブラジルW杯でベスト16の壁を超えた日本代表を見たいのだ。
日本代表はまだ旅の途上だ。夢はまだ終わらない。

2011年2月 1日 (火)

NEW MORNING(新しい夜明け)

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先週の土曜日から日曜日にかけては、ほんと濃い時間を過ごしたなあ…。BYGでのリクオのライブが終わって急いで帰宅すると、時計の針は11時半。そそくさと風呂を済ませると、今度は息子とともにテレビの前に正座。サッカー・アジア杯の優勝決定戦、対オーストラリア戦を見るためだ。試合が終わったのが午前3時近く。そこから寝ようと思ったんだけど、こんな素晴らしい試合を見せられたら興奮しちゃって寝られるわけないじゃないの!優勝が決まった瞬間、内田や吉田がこの試合に出られなかった選手のユニフォームを着てピッチに飛び出して来たのを見て、思わずホロリ。畜生、味なことしやがって…。おぢさんはこういうベタな展開にめっぽう弱いんだよ(苦笑)。
なので、オレは先週末はほとんど寝ていない。

それにしても、スポーツでは結果を出すって、やっぱり大事。僕らの代表がアジア杯で見せてくれたサッカーは、W杯で感じた日本サッカー進化の予感をより強く印象付けてくれた。もちろん、これが通過点でしかないことはわかってるさ。ここぞとばかりに浮かれ、持ち上げるマスコミに便乗しない冷静さも必要だ。でも、これまで僕らは耐えて耐えて耐え続けてきたのだ。試合会場が日本にとって忌まわしい場所であったカタール、決勝戦の相手が5年前に僕を徹底的に打ちのめしたオーストラリアってのも何かの縁。今は痺れるような勝利の余韻に少しだけ浸っていたっていいじゃないの。

僕が優勝以上に嬉しいのは、W杯→アジア杯と続いて、日本らしいサッカーの色が出来つつあるということだ(“できている”とはあえて言わない)。少し前まで日本の目指していたサッカーは“ボールも人も動くサッカー”だった。結局それは完成を見ることはなかったが、今の“ピッチもベンチも全員で戦うサッカー”は、結果的に組織と敏捷性を活かした日本らしいサッカーになっているのではないか。
なんと言っても、この“和”を大事にするというチームカラーは、僕らのメンタリティにぴったりだ。だって、どんなに強くたって選手も監督も協会もてんでバラバラな某フランス代表なんて応援したくもないでしょう?(苦笑)。
やっぱり感情移入しちゃうのは“ザ・スポ根”(笑)。ロックだファンクだってバタくさいこと言ってても、結局オレは日本人なんだってことを強く思った夜でもあった。

気になる点もないではない。特にザッケローニ監督の戦術に関してはね…。
たとえば、準決勝の韓国戦、ザックは後半にFW前田を下げてDF伊野波を入れ、5バックで逃げ切ろうとしたけど、オレ、これを見て“ああ、やっぱしイタリア人だなあ…”って思ったんだ。あの場面、たとえばモウリーニョだったら更にイケイケでもう一点獲ろうとしただろう。アグレッシブなサッカーをすれば、もしかしたらあの試合は90分で決着が付いていたかもしれない。結果的にPKで勝ったから誰も問題にしないが、あの交代は難しい試合を余計難しくしたようにも思える。決勝戦でも、最大の勝因は長友を前に出した攻撃的な布陣だったわけだけど、あれは今野が中盤に行くのを不安がった結果がそうなったわけで、ザックのファースト・チョイスではなかったのだ。
でもまあ、ザックにはこれが初のナショナルチームなんだし、選手の言う事もよく聴く人だっていうから、これから徐々に変わっていくのかもしれない。なんと言っても、彼の選手に対する人心掌握力、サブのメンバーにもレギュラーと同じようなモチベーションを持たせる手腕は流石だ。こういうタイプの監督は確かに歴代の代表監督にはいなかったし、このマネージメント手法は日本人好みだとも思う。つくづく原さんは、いい人を連れてきてくれたなあ…。

これで日本はコンフェデ杯に出られるし、今年はコパ・アメリカにも出られる。負けてもともと。失うものは何もない。アジアを越えてFIFAランク上位の国と対戦する時、初めて日本サッカーを世界基準で語れる時が来るのだ。アジアチャンピオンとして威風堂々のガチンコ勝負をして欲しい。今から本当に楽しみだ。

P.S. 今朝、長友がインテルに電撃移籍したとの情報が!この手の話はガセが多いから最初は半信半疑だったんだけど、インテルの公式サイトがそう言ってるんだからもう間違いない。インテルの左サイドバックってことはキブとスタメン争いか…。大変な勝負だが是非頑張ってレギュラーを獲得して欲しい。
それにしても、3年前には多摩のスタジアムで僕ら親子が声援を送ってた選手が、いまやカルチョの国のNo.1クラブの一員か…。スゴイなあ、長友!

2010年9月 8日 (水)

【日本代表/国際親善試合】 VSパラグアイ、VSグアテマラ

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インターナショナル・ウィークに行われた国際試合2つ。僕はもともとグアテマラ戦はあまり意味があるとは思ってなかったので、ここは対パラグアイ戦を語りたいと思う。僕はこの試合をとても楽しみにしていた。W杯で素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた僕らの代表のW杯後初の国際試合。しかも、相手は決勝トーナメントでガチンコでぶつかった国だ。果たしてW杯で見せたスタイルが定着するのか、一過性のものだったのか、この夜ですべてが判ると思っていた。

思い返してみて欲しい。これまでにも日本代表が浮上するきっかけになりそうな節目は幾つもあった。たとえばジーコ監督就任後初試合での“黄金の中盤”誕生の瞬間とか、オシム監督時代にFW高原が覚醒した時とか、3大陸トーナメントで優勝した時とか…。そのたびごとに僕らは大いなる期待を持って代表の進化を期待した。でも、最後はやっぱり失望させられちゃったんだよな。日本は“善戦するんだけど勝てないチーム”をどうしても脱せなかった。ピッチで展開される90分はそのほとんどがつまらないパス回し。見えかけた光は一過性のものでしかなかったのだ。
今度もそうなってしまうのではないか。南アフリカで見た夢はやっぱりあそこだけのマジックだったのではないか…。いやいや、そんなことはない。堅守速攻をあそこまで組織的にやり遂げた代表なのだから、きっと何かを見せてくれるはず…。そんな期待と不安が入り混じった気持ちだった。

パラグアイは気合十分で日本に乗り込んできた。W杯出場メンバーを中心にメンツはほぼ主力。それも4日も前から来日してコンディショニングを行うという周到さだ。対する日本は遠藤がいない。長谷部がいない。大久保がいない。闘莉王がいない。そのかわり、W杯では試合に出なかった内田と森本、それに細貝と香川がスタメン入りするという。監督は代行の原さん。はっきり言って、この時点まではホームの日本のほうがリスクを抱えていたと言っていい。
不謹慎かもしれないけど、僕はこれは面白いことになってきたと思った。長谷部・闘莉王というメンタルリーダーがいない日本が、本気モードの南米の古豪を迎え撃つ。果たして大コケするのか、新しいメンバーで堅守速攻を継承できるのか…。

結論から言うと、代表は僕の予想を大きく超えた素晴らしいサッカーをやってくれた。そしてなんと勝ってしまったのだから笑いが止まらない!(笑)
もちろん、W杯という究極の舞台と単なる親善試合を単純に比べるべきでないことはわかっている。だが、本気モードのFIFAランク15位の国に32位の日本が勝ったのだ。十分自慢してもいいんじゃないのか、これは?
しかも、内容はW杯決勝トーナメントよりずっと良かった。いったんボールを持つと選手たちが一斉に敵陣に駆け上がってぽんぽんパスを回す様は、とても半年前の日本代表チームとは思えなかった。大げさかもしれないけれど、まるでアーセナルやローマのサッカーを見るようで、試合を見た後の満足感は1-0以上のものがあったと思う。

個人的に嬉しかったのは香川と細貝の活躍だ。W杯出場メンバーがスタイルを継承しているのは当然だとしても、南アフリカではピッチに立てなかった彼らが、当たり前のようにチームのスタイルに順応しているのには本当に驚かされた。代表チームのサッカーは、文字通りその国の目指すサッカーの象徴でなければならない、なんてことを誰かが言っていたが、その意味をこれほど明白に見せてくれた試合はなかったと思う。

とにかく面白かった。そして、こんな面白いサッカーをザッケローニの前で見せることができたことの意味も大きいのではないか?W杯での対パラグアイ戦は、日本とパラグアイの国民以外には退屈な試合と思われても仕方なかったと思う。でも、この試合は世界中どの国のサッカーファンに見せても恥ずかしくないものだ。これであのイタリア人も本腰入れて日本を指導してくれるだろう。

もう一つ。これはあんまり言っちゃいけないことなのかもしれないけど(苦笑)、原博美恐るべし!この試合の影の功労者は原さんだ!
代行監督という難しい仕事でありながら、原さんはW杯で得た資産の継承と若手の融合、ザッケローニさんへのお披露目と橋渡しという複数のミッションを見事にこなしてしまった。後半には香川に換えて駒野をピッチに送り、サポーターの大拍手を呼び起こすという心憎い演出までして。うーん、やるなあ…。こういうのを粋というのではないだろうか。少なくともトルシエなら絶対こんなことはしないぞ(笑)。

ともあれ、これで方向は定まった。W杯でのスタイルは確実に継承された。実は勝利よりも得点よりもそっちの方がデカイと僕は思う。
カテナチオの国からやってきた異端の監督の元、これから日本代表がどんな進化を遂げていくのか、10月のアルゼンチン戦も楽しみになってきた。

2010年7月12日 (月)

【2010 FIFA WORLD CUP】スペインが優勝!

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この優勝は嬉しい。

決して素晴らしい試合だったとは言い難いが、こういう楽しくて結果も伴うチームが世界一になったことには、胸のすくような思いがする。
思い起こせば、98年のEUROでスペインが優勝した時は、誰もがこれからは攻撃サッカーの時代が来ると言っていたっけ。それが昨シーズンのCLで超守備的なサッカーをやったインテルが優勝したことで、また元に戻ってしまったような感があった。今回のW杯でも、スペインはいきなり緒戦でつまづいてしまい、やっぱし時代は堅守のサッカーなのかと思い始めた矢先だったからなあ…。

オランダは、ちょっとこの闘い方には悔いが残るんじゃないだろうか。なんだか、自分たちのサッカーをする以前に、相手の良さを消そうと躍起になっているような試合運びだった。中盤への荒っぽい接触が多く、たくさんのカードをもらうという結果に。個人的に注目していたファン・ボメルもこの日は本性丸出しの悪役振り(苦笑)。何も知らない子供たちがこの試合を見たら、きっとスペインが正義の味方でオランダが悪の化身みたいに見えただろう(笑)。

ともあれ、4年に一度の祭典は終了した。この後、選手たちはつかの間の休息をとって秋から各クラブに帰ってのリーグ戦が始まる。
オレはW杯で活躍した選手たちが、今後移籍市場でどう動いていくのかがとても楽しみ。そもそもW杯があった年の各国リーグは、選手の疲れがまだ抜けていないことが多く、移籍した選手もチームにフィットしていないから展開が読めない事が多い。そういう意味では番狂わせが起きる確立も高いし、セリエAに移る長友も十分活躍が期待できるしと思うんだけど。

スペインが優勝したことで、当然リーガ・エスパニョーラ人気は高まるだろう。バルセロナなんかそっくりそのままナショナルチームの背骨の選手だもんなあ。バルサは好きだけど、個人的にこれはつまらない。ここは一つ、他のクラブの奮起を期待したい。そうそう、レアル・マドリードにはこの大会で輝けなかったロナウドとカカがいるじゃないか。おまけに監督は堅守が得意なモウリーニョ。往年のライバル同士だけど、今季はますます面白い対比になってきたんじゃないだろうか。

本田が移籍するのかも気になる。個人的には、噂に出てるミランかバレンシアに移ったらけっこう面白いことになると思うんだけど。両方とも世代交代の時期にさしかかってるから、出場できるチャンスはありそう。まあ、常識的に考えれば超のつくようなスター選手でない限り、移籍後半年で動くってのは考えられないけど、サッカー界は何が起こるかわからないからね。こうやっていろいろ想像を巡らすのも、この時期の大きな楽しみ(笑)。

2010年7月10日 (土)

【2010 FIFA WORLD CUP】オランダには狸がいる

179568_2 さて、W杯もいよいよ三位決定戦と決勝を残すのみとなった。決勝はオランダVSスペインという攻撃サッカーを標榜するチーム同士の対戦だから、これはけっこう華やかで面白いものになるんじゃないだろうか?
個人的にはスペインを応援してるんだけど、実はオレ、オランダに妙に気になってる選手がいるのだ。それは中盤の底にいるベテランのファン・ボメルという男。オランダは中盤がWボランチになっていて、派手なラフプレーはコンビを組んでる若手のデ・ヨングがやってることが多いから、このファン・ボメルはあまり目立たない。ところが、よくよく見てるとなかなかの曲者なんだ、コイツ(苦笑)。

オレがファン・ボメルの存在が気になりだしたのは準々決勝の対ブラジル戦。この日の主審は日本人の西村さんだったんだけど、サッカー王国である両チームは、最初アジアから来た無名の審判を露骨にバカにしているように見えた。小さいファウルを採った・採らなかったで、すぐに両軍入り乱れての猛抗議。選手たちは俳優顔負けの大げさなアピールを繰り返す。
そこにやおら登場してきたのがミスター・ファン・ボメル氏(笑)。オレ、この選手には“導火線が短い男”という印象があったんだ。チャンピオンズリーグの決勝で所属クラブのバイエルンがインテルと闘った時なんか、チームの誰よりも早く主審に詰め寄ってドツキまくっていたからね。あーあ西村さん、厄介な奴に目を付けられちゃったなあ、と思って見ていたら、なんとこの男、熱くなってる選手たちと西村さんの間に割って入り、事態の収拾に乗り出したのだ。時には西村さんに笑顔さえ見せ、まるで“お前も大変な試合の審判を引き受けちゃったもんだなあ、同情するよ…”と言わんばかりに。
オレ、感心してしまいましたよ。結果的にこの試合はオランダが勝利したんだけど、これはブラジルの選手がレッドカードを貰って退場し、後半オランダが一人多い人数で戦えたことも大きかったと思う。だが試合全体を見ると、実はオランダはブラジルより多くのカードを貰っていたのだ。もし、ファン・ボメルが試合を落ち着かせなかったら、もしかしたらオランダの方がブラジルより先に退場者を出していた可能性もあったのではないだろうか。こういう行為は審判にも印象が良いに違いないし(まあ、それがブラジルへのレッドに繋がったとまでは言わないけど)。暴れん坊だと思ってたのにやるじゃん、ファン・ボメル~!とオレは思ったわけ。

ところがです。準決勝のウルグアイ戦を見て、そんな甘々な印象は見事に覆されました(苦笑)。この日もファン・ボメルに注目して見てると、この男、けっこう荒っぽい事をやっているのだ。デ・ヨングの陰に隠れてるのを良いことに、肘で相手選手の顔を擦ったり、あからさまに足に絡むタックルを仕掛けたり…。そんで自分から仕掛けてるはずなのに、いつの間にか立場逆転でピッチの外で治療を受けてたりなんかする(笑)。時間を稼いで、涼しい顔でゆうゆうとピッチに戻ってきたりなんかしているのだ。

オレ、今度は別の意味で感心(笑)。いやあ~狸だなあ…。
スナイデルやロッペンみたいな派手な選手も魅力だけど、こういう“こすい”選手がいることもオランダの強さの秘密なんじゃないかと思う。中盤の底はゲームメーカー的な役割を期待されるポジションだけど、DFをフォローしたり前線に効果的なパスを供給するだけじゃなく、こういう風にゲーム全体のムードを変えたり、硬直した中でいったん時間を区切ってゲームをコントロールするのも、ひとつの技術なんじゃないかと思ったわけです。

スペインとの決勝戦は、両軍の意地がぶつかって必要以上にヒートアップする展開も予想できる。その時、このミスター“狸”ファン・ボメル氏(笑)がピッチで何をやってるか。これってちょっと勝敗の鍵になるんじゃないかなあ。スナイデルとビジャの得点王争いも面白いけど、オレはファン・ボメルの裏稼業(笑)にも注目して見てようと思ってます。

2010年7月 5日 (月)

【2010 FIFA WORLD CUP】日本代表をめぐる冒険

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先週は仕事でずっと地方に。出張中は自分の裁量で時間管理ができるので、午前中を移動時間、午後に集中して仕事というスケジュールにして東北のある県を駆け回った。夜はビジネスホテルで缶ビール片手にW杯に熱中する日々。ほんとはシューズ持参で出先でも走ろうと思っていたんだけど、このところ足首に違和感があったんでここは大事をとって完全休養することに。いったんそう決めちゃうと、いくらでも夜更かしできちゃう。なので、今回はベスト4を決める試合、ほとんど生観戦しました。移動時間、ほとんど死んでましたけどね(苦笑)。

僕らの代表はベスト16で全ての冒険を終えた。実は、まだぼーっとしてるんだ、オレ。すべてを見渡すような気持ちにはまだとてもなれず、余韻に浸っていたいのが正直な気持ち。ベスト8の壁を破れなかったパラグアイ戦は確かに悔しかったけれど、あれだけ勇敢に闘った選手たちになんの文句があろうか。

僕は、僕らの代表にとても大事なことを教わったような気がする。それは、今この時に全力を出し切ること。そして、結果を手にするためにエゴを捨て一丸となることだ。当たり前といえば当たり前かもしれないが、その当たり前のことをやるのがどれだけ難しいことか、またそれが適った時はこれだけ大きなものが得られるということを、僕らの代表は身を持って教えてくれていたと思う。
そういった意味では、僕は、2010年7月の時点において日本代表はフランスやイングランドの代表よりも“いいチーム”であったと胸を張って言うことができる(強かったかどうかは別にして)。それはとても幸せなことだと思うんだ。

実際、パラグアイとの力の差は試合で表れていた以上にあったはずなのだが、僕らの代表は120分間、互角以上に闘った。がっぷり四つで南米の常連国と堂々と渡り合ったのだ、彼らは!
しっかりと守備ブロックを築き、チャンスと見るや人数をかけて攻め上がる。そこに精度の低さはあったかもしれないが、これまでの日本代表によく見られた(そして、それこそが僕らが一番イライラさせられた)中途半端なポゼッションに甘んじ、時間だけが経過するような消極的な姿は綺麗に消えていた。守備にしても、積極的な守備とでも言えばいいんだろうか、全員で何としてでもゴールを守るという鬼気迫る姿は感動的ですらあった。

もうひとつ強く感じたのは、これも当たり前のことかもしれないけれど、“勝つ”のがいかに大切かってことだ。今回、チームが劇的に変わるきっかけになったのは、初戦のカメルーン戦だったと誰もが言っていたが、ひとつの勝利がチームの状態からマスコミの見方まで、全てを良い方向に劇的に変えてしまうことを、これほど実感したことはこれまでなかったような気がする。
確かに、これはオシムさんが提唱し岡田さんが継承すると言っていた“ポゼッション・サッカー”=日本らしいサッカーではなかったかもしれない。でも、それがなんだというのだ?たとえどんなにアンチなスタイルだったとしても、勝利の美酒には適わない。この痺れるような感覚を、僕らは98年からずっと欲していたのだ。
“○○らしいサッカー”というスタイルを確立して勝利を得られれば、それに越したことはないよ、もちろん。けれど、はっきり言って日本のレベルはまだまだそこまで達していない。ならば勝利を、どんな不恰好なサッカーでもまずは現実路線で勝利を目指した岡田さんのやり方は、100%正しかったと僕は思う。

ただ、ひとつあえて言わせてもらえると、これが果たして将来にわたって日本が目指すべき姿なのか、何処かへ向かう途中の通過点であるべきなのかは、これからじっくりと検証すべきなんじゃないのか。
ちょっと危惧してしまうのは、今の流れがマスコミ・世論からサポーターまで“本田スゴイ”“岡田さんゴメンナサイ”一色になってしまっていることだ。もしかしたら、これは国技である大相撲があまりにも情けない状態だったり、頼れる総理大臣を担げないこの国の政治の不甲斐なさへの反動なのかもしれない。けれど、この手のひらを返したようなちやほやぶりが、今回の日本代表を見る目にバイアスをかけてしまう様なことがあってはならないと僕は思う。

ともあれ、今はもう少しこの余韻に浸りたい。少なくとも“あの時PKを蹴るのが駒野じゃなかったら…”なんて言ってる奴とは、オレは友だちになりたくないぜ(苦笑)。そう、互角に闘った120分も痺れたけれど、すべてが終わった後、駒野の肩を抱いて本人以上に涙を流していた松井大輔の男気にも惚れたんだからな、オレは。

「駒野を誘って死ぬまで呑ませたい…」 

これ、試合後の松井のコメント。なんて感動的なチーム愛なんだろうか…。元スポ根少年。現ヘタレおっさんランナーはこういうセリフに涙腺が決壊してしまうのだ(苦笑)。人生に二度とないかもしれない素晴らしい時間を過ごしたであろう彼らを、僕は少し羨ましくさえ思う。
たぶん、中田なんか僕以上に羨ましく思っているんだろうなあ…。今ごろ、“引退するんじゃなかった…”とか後悔してたりなんかして(苦笑)。

2010年6月25日 (金)

【2010 FIFA WORLD CUP】2010年06月25日 日本vsデンマーク

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うすうす気がついていたが、この試合を見ていてはっきり自覚してしまった。普段どんなにクールでいようとも(いやまあ、そんなに気取ってるわけでもありませんが…(苦笑))オレの本質は負けず嫌いの汗臭いスポ根野郎(笑)。残念ながら運動神経も頭脳もあんまりデキが良く生まれてこなかったから、これまでの人生で勝利の美酒に酔った経験はほとんどないが、やらねばならない場面では、いつも自分なりに精いっぱい努力し闘ってきた。やる前から“どうせ駄目だから…”と諦めたり、負けた時の言い訳を用意するのは大嫌いだ。運動会、受験、仕事。中途半端にしてしまうと後々まで重い後悔が残る。それが嫌だから勝つために自分と闘う。
スポーツを観戦する時も基本的なスタンスは同じ。勝つために闘っているスピリットが伝わってくることが一番大事。不器用でも真剣にやってる奴のあげ足をとるようなことを言う評論家もファンも大嫌いだ。

オレが4年前のドイツ大会の日本代表を見ていて、怒りにも近い気持ちを覚えたのは、彼らから闘う集団としての匂いが一向に伝わってこなかったからだ。もちろん、ベストを尽くした選手もいたとは思う。だが、チームが一丸となって勝利を目指しているようにはとても見えなかった。
今の日本代表は違う。全員がエゴを捨て、勝利を目指してチームのために闘っていることが、テレビを通してもはっきりと伝わってくる。それが嬉しいんだ、オレは。結果としてこのチームは1次リーグを突破したけど、この闘い方を見せてくれていれば、全敗でも熱くなれたかもしれない。だが、勝った。勝って一次リーグを堂々と自力で突破した。素晴らしいじゃないか!

対デンマーク戦は、対カメルーン・対オランダよりもさらに良かったと思う。それは、彼らがデカい欧州野郎に対して中途半端に引かず、堂々と立ち向かっていたからだ。本田の目の醒めるようなフリーキックは確かに素晴らしかったけど、真に賞賛されるべきは全員で勝利を目指した姿勢とひたむきさだと思う。できることなら、選手全員にMOMをあげたいぐらい。
それにしても、こういう戦術をなんと言えばいいんだろうなあ…。よく言われる本田の1トップ、これ、欧州サッカーをよく観ている人なら気が付いてると思うけど、実は1トップになっていないよね?むしろ、スパロッティが監督をやっていたASローマの“ゼロトップ”の考え方に近い。攻撃的か保守的かといわれれば明らかに保守寄りなんだけど、全員でガチガチに固めているわけでもなく、行くときは行く。空いてるスペースにはどんどん出て行く。要するに、オシムさんの言ってた“走るサッカー”に岡田さんが実戦的なスパイスを効かせた戦術が見事に効いているように、オレには見える。

この素晴らしい結果を生んだのは、本田圭佑の覚醒や堅守速攻のフォーメーションがうまくハマったこともあるだろう。だが、いみじくもデンマーク戦後に岡田監督が語っていたように、最大の要因は選手もスタッフも一丸となって勝利を目指す闘う集団になっていることなのではないだろうか。
確かに、これは美しいサッカーではない。“アンチ・フットボール”と言われれば全くそのとおり。だけど、それでもオレにとってこれは十分に魅力的で熱いサッカーなのだ。アンチで大いに結構。闘莉王も言ってたけど、下手クソが下手クソなりの美学を通せば、それは十分に心を打つものなのだ。

オレの涙腺が完全決壊したのは、DFの中澤佑二が嬉しさを堪えきれない表情でインタビューを受けている映像を見た時。彼は、全敗したドイツ大会で失意の底に落ち込み、一時は代表引退まで考えた選手なのだ。そんな彼が少し目を潤ませながらインタビューに応えている…。
正直言って、この戦術がどこまで通用するのかはわからない。でも、取りあえずはこれが今の日本の集大成。決勝トーナメント1回戦、もちろん勝って欲しいが、それ以上に魂をこめた全員サッカーを、一試合でも長く見ていたい。

2009年6月25日金曜日。
オレは、この日ハーフタイムに見た朝焼けの美しさを一生忘れないだろう。
目を赤くした人たちが、少し誇らしげに駅で電車の来るのを待っていたこの日の出勤風景を、オレは一生忘れないだろう。

2010年6月16日 (水)

【2010 FIFA WORLD CUP】2010年06月15日 日本vsカメルーン

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泣いてしまった。心から感動した。

確かに、一部の海外メディアが酷評しているように、客観的に見れば日本は美しくスペクタクルなフットボールを展開したとは言い難い。
でも、だからどうした?そんなものは決勝トーナメントの常連国に任せておけ。僕らはまだそのレベルの足元にすら到達していないのだ。今の僕らに必要なのは、どんなカタチであれ“結果”を手中にすること。選手たちはそれをわかっていたからこそ、徹底してつまらないサッカーを威風堂々90分間やってのけた。そこに僕は深く感動したんだ。

危ないシーンもあった。はっきり言うと薄氷の勝利だった。
僕が思うに、決定的なピンチは大きく言って2つあったと思う。ひとつは前半37分、カメルーンの左サイドバックにパスを刈り取られ、ドリブルで一気に上がられたシーン。2つ目は後半40分台にカメルーンが最終ラインをぐいぐい上げてきたため、日本はセカンドボールを全く拾えなくなり、あられのような波状攻撃を受けたシーンだ。
前者は中途半端なパスミスを当然のように奪われたもので、これは凡ミスと言われても仕方がない。修正の余地大いにありだ。後者はある意味相手が強引にパワープレイに持ち込んできたわけだから、しょうがないと言えばしょうがないと思う。両方とも相手シュートが外れたのは、この日のニッポンが運も味方につけていたということなんだろう。

甘々に聞こえるかもしれないけど、オレはこの2つ以外、この日のニッポンはほぼ完璧だったと思っている。パスミス?そんなもの、トライしてればいくらだってあることじゃないか!
この日のニッポンのディフェンスは本当に素晴らしかった。エトーを中へ入らせなかった長友の頑張りも、中沢&闘莉王の門番も良かったけど、オレは両サイドハーフが献身的に守備をしたことと、中盤の3人がトリプルボランチ的な連携で上手く機能したことが何よりも大きいと思う。
攻撃では右ハーフの松井大輔。以前から大好きな選手ではあったが、この日の勇敢なプレイには心から感動させられた。フランスリーグで黒人選手とのマッチアップに慣れているとは言え、黒豹のように立ちはだかるカメルーンのDF陣に、何度も何度もドリブル突破を試みる青きサムライの勇気と気迫…。本当に心打たれた。なんか、書いていてまた涙ぐんでしまうぐらいだ…。

だけど、あえて言えばこの日の試合にヒーローはいなかったのではないか。この試合に関わった全員が、魂を震わせて必死に、必死に、必死に、必死に闘っていることが見る者にもはっきりと伝わってきた。一人のストライカーが超人的な技で勝利をもぎ取ったのではなく、誰もが自分の役割を自覚し、ベンチやスタッフも含めた全員が闘って貴重な海外でのW杯初勝利をものにした意義はとてつもなく大きいと思う。

確かに、カメルーンはグダグダだった。日本にとって最も幸運だったのは、このチームでのエトーはゴールを決める役割以外に、チーム全体のオーガナイズもしなければならなかったということ。そして、ストライカーとしては超一流の彼も、そっちにおいてはそうではなかったということだ。そのため、日本にとって最高に危険であったはずの黒豹は、ほとんど右のアウトサイドに貼り付き状態になっていた。
でも、だからと言ってこの勝利の輝きはいささかも揺るがない。そもそも、選手間の関係やコンディションも含めてトータルにチームを作り上げていくのも、国際大会における大切なチーム・マネジメントだ。実際、前回大会までの日本は、実力以前にそこがダメダメだったのだから…。もし、今回のカメルーンがそれに失敗していたというのなら、そこも含めて日本はカメルーンに勝っていたのだ。

もちろん、僕らはまだ何も手にしてはいない。でも、この勝利を境に、明日から見るであろう光景はこれまでとは少しだけ違ったものになるのではないか。
実を言うと、オレ自身、最近はチームの急激な進化ばかり夢見て、目先の成果が出ないと文句ばかり言っているサッカーファンに、ほとほと嫌気がさしていた。これが日本のサッカーファンのベーシックなスタンスだというのなら、オレはもうそんなところにはいたくないとすら思った。これからは何があろうと黙して語らず、静かに熱く日本代表を追い続けていよう…。そんなことまで思っていたんだけど、この夜を境にまた考えが変わったな。

繰り返すが、これは断じて酷い試合でもつまらない試合でもなかった。1-0のスコアは本当に美しい。4年前の悪夢を払拭してくれたことが本当に嬉しい。僕たちの代表が、こんなにも魂を振るわせてくれる試合をしてくれたことが本当に嬉しい。この試合、MVPは本田でも松井でも長谷部でもない。チーム全員がMVPだ。

ゴールを決めて、ベンチの輪に飛び込む本田の写真を見るたびに、また涙が出てきてしまう…。

2010年4月29日 (木)

決勝はバイエルン VS インテル

この28、29日、ヨーロッパでは、サッカーのチャンピオンズリーグ準決勝2試合が行われた。昨日の朝がドイツのバイエルン・ミュンヘンVSフランスのオリンピック・リヨン、今朝がイタリアのインテルVSスペインのバルセロナという大一番だ。
オレ、2試合ともリアルタイムでがっつり見ました。日本時間だと夜中の3時30分開始なんで、かなりキツイんだけど、夕方になるとネットとか駅売りの新聞に結果が出ちゃうじゃん。オレはあれがたまらなく嫌。見たくない人に無理やり目に入っちゃう広告を出すのは一種の暴力だとすら思うぞ。なので、重要な試合は無理をしてでもリアルタイムで見る!ってのが、オレの身上なのだ。

結局、バイエルンとインテルがそれぞれ決勝に進む事になった。
去年の9月に本大会が始まって以来、ずっと主要な試合をチェックしてきたんだけど、毎年思うことではあるが、ここにくるまでほんとうにいろんなドラマがあったと思う。たかがサッカーされどサッカー。試合を見てるといろんなことを考えさせられた。つくづくこのスポーツは深いと改めて思う。

5月22日の決勝まではちょっと時間があるし、ここいらでオレなりに今年の大会を振り返ってみたい。
まず、今季の決勝がバイエルンVSインテルになったこと自体、かなり意外だった。っていうか、大会前からこの組み合わせを予想した人は、熱心なサッカーファンの間でもほとんどいなかったのではないだろうか?
なにしろ、バイエルン・ミュンヘンはドイツ1の名門とはいえ、最近はブンデスリーガ自体プレミアやリーガより下に見られがちだ。バイエルンもここ数年は指揮官が激しく入れ替わったりして、国内はともかく欧州では安定した力を発揮できていなかった。僕なんか、もう古豪ぐらいのつもりでいたから、この大躍進ぶりには正直驚いてしまった。
インテルは、強いことは強いけどチャンピオンリーグとは昔から相性が悪く、肝心なところでポカをやるという印象があった。今季はストライカーのイブラヒモビッチが移籍しちゃったし、新規加入のエトーも今季はあんまりゴールを挙げていなかったから、昨季より戦力はダウンしてるんじゃないかと思っていたのだ。

それが、気が付いたらこうだからなあ…。つくづくサッカーはわからないと思った。
バイエルンは、グループリーグの頃はやっぱしまだ危なっかしかった。それが、ユベントスに勝ち越したあたりから急に覚醒しちゃったような感じだったなあ…。ロッペンが大爆発したり、オリッチが別人のように張り切りだしたり、いろんなプラス効果が出るようになった印象だ。おまけにクジ運の強さまで見方に付けちゃって、あれよあれよという間にここまで来ちゃった感じ。
インテルは、自分はバイエルン以上にノーマークだった。はっきり言って、今朝の試合だって、最後までバルセロナが決勝に進むと信じて観てたぐらい。
だって、バルセロナの本拠地、カンプノウでの試合、10万近い観客が殺意に近い目で彼らを取り囲む中、後のないバルサの世界一の攻撃陣が絨毯爆撃をかけてくる。ボールポゼッションはバルサが70%以上。インテルはシュート数一本だけという異常な数字。普通、こういうデータだったら、バルサの大勝だっておかしくない。ところが、バルサは結局1ゴールしかできなくて、第一戦を3-1で勝利してたインテルが、トータルスコアで勝ち越して決勝に進んだのだ。
これはもうインテル、というか指揮官のモウリーニョの作戦勝ちだよね。CLはホーム&アウエー2試合で勝ち抜けを決める。だから、彼は敵地でヘタに攻め立てて自滅するより、自陣にがっちり引き篭もって2点のリードポイントを守ろうという考えだったのだと思う。
だけど、通常こういう戦法は、そうと決めてもなかなか選手全体に考えが浸透することは難しいのだ。過去の試合を観てても、これをやろうとして90分間我慢できずに自滅したパターンがいくらだってある。だって、やっぱりストライカーは点を取りたいし、攻めずに相手をチェックするだけのサッカーは、ファンからは反近代的だとの批判を受けるリスクを背負う。
ところが、この日のインテルはMFのスナイデルだけトップに残し、ほとんどの選手が自陣に戻って献身的に守備をするという、見たこともないようなサッカーをしていた。なにしろ、プライド高いFWのエトーまでもが、ディフェンスラインまで下がってきて守備に身体を投げ出していたのだ。
オレ、ここまで選手をひとつにできた、モウリーニョという男の人身掌握術に脱帽してしまった。モウリーニョが監督になる前のインテルは、強いことは強いけど、選手それぞれがそれぞれのサッカー観を持っていて、ばらばらに動いている印象があった。それがここまで勝負に徹した集団になるとはなあ…。
もともとインテルはディフェンスの強固さには定評のあるチーム。本気で引いた相手には、世界最高のストライカーを擁するバルサといえど点を取るのは難しいんだと思った。

ただ、バルサももうちょっとなんとかできなかったかと思うんだよね。ご自慢の流れるようなパスサッカーは確かに美しいし、面白い。でも、あまりにもボールを回しすぎるから、その間に相手が自陣に戻ってゴール前を固めるだけの時間も稼がせてしまうのだ。
今朝の試合は、ある意味バルサの限界が見えた試合だとも言えるんじゃないだろうか?相手にボールを持たせてカウンターを狙ったり、ロングボールを放り込む戦術も併用していかないと、引き篭もった相手からゴールを奪うのはなかなか難しいんだと思った。
ユーロで優勝したスペインが象徴しているように、いまの時代は攻撃サッカーが主流といわれる。けど、この試合はその流れがちょっと淀みを見せたような、何かが変わる前触れのようなものを感じた。決して面白い試合ではなかったのだが、いろんな見方ができ、なんだか妙な余韻が残ったんだよなあ…。

決勝でも、オレはインテルが圧倒的に有利だと見る。バイエルンが勝つとしたら、とにかく先制点を取ること。これに尽きるだろう。インテルが先に点をとって自陣に引き篭られたら、まずバイエルンに勝ち目はないと思う。それと、バイエルンはリベリーが出場停止なのが痛いなあ…。彼とロッペンが上手く噛み合えば、ひょっとしてひょっとすると思ったんだけど…。
ただ、このチームは何か不思議な風が吹いているからなあ、今。何かが起きる可能性もなくはないと思う。両チームとも、国内リーグやカップ戦の優勝もまだ狙える位置にいるし、5月の下旬ともなれば、その辺との絡みもでてきそうだ。

うーん、決勝戦、ますます見逃せなくなってきた。また3時起きだな、これは(笑)

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