カレー

2009年9月12日 (土)

【カレー】 curry diningbar「笑夢」(福島市)

curry diningbar「笑夢」(えむ)
福島県福島市大町2-35-2F

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久しぶりに帰った故郷の町は激変していた。昔あった百貨店のいくつかは閉店してしまい、駅前の繁華街で目立つのはチェーンの居酒屋とラーメン屋ばかり。浪人時代、悪友たちと飲み歩いた馴染みの店は影も形もなくなっていた。まあ、このご時勢だからそれも仕方ないんだろうとは思うけど、日本中どこに行っても同じような飲み屋ばかりってのは、旅行者にとっては非常につまらないことなのだ。
地方は車社会だから、郊外まで足を伸ばせば、きっと隠れた名店も存在しているんだろうけど、わずかな滞在でそれを開拓するのはちょっと無理。出張者がその町で居心地のいい店と出会うってのは、実は意外に難しいことなのだ。たとえ、それがふるさとのように土地勘のある町だったとしても…。

そんな中、これは!と思うお店をばっちり見つけられたオレはほんとラッキーだと思う。しかも、お店のある一帯は昔は気の効いたレコード屋や本屋、老舗のジャズ喫茶なんかがあって高校時代は自分の縄張りだったところなのだ(笑)。これは運命だろ?やっぱ。うん、仕事はさておき、この店との出会いはこの出張で一番の収穫だったかも(笑)。

そのお店、名前を「笑夢」(“えむ”と読む)という。カレー屋だ。このブログを長く読んでくださってる方はご存知だと思うけど、オレはカレーが3度の飯より大好き(笑)。なので、地方出張の時には、事前に必ず訪ねる町のカレー屋をチェックしておくんだけど、わが故郷福島市には、どういうわけかこれまで本格的なカレー店がなかった。
ところが、今回は思いがけなくもネットでここを発見。南インド風を掲げるカレー屋だけに、これは是非行って見なくては!と思っていたんだよね。

結論から言うと、オレ、3日間の福島滞在中に2回も行っちゃったぞ、ここに(笑)。それほど美味しくて居心地のいいお店だったのだ。
1日目は開店とほぼ同時刻に行ったんだけど、店内には既にたくさんのお客さんがいた。このあたりは市内でも銀行が多く集まっている地域だから、店内は制服を着たOLさんがいっぱい。お昼は740円から840円でサラダ、デザート、ドリンク付のカレーランチが食べられるんだから、そりゃあ通うわなあ…。ロコモコなんかがっつり食べてるお嬢さん方もおりまして、うーん、福島の女は逞しいわ(笑)。

自分は厨房がよく見えるカウンターに座り、お店自慢の一品だというキーマカレーをオーダー。
うん、美味い!一言で言うととてもバランスよく味を整えたキーマカレーだと思う。キーマというと、たとえば「カフェハイチ」のそれをすぐに思い浮かべるけど、あんなとんがった印象ではなく、誰にでも好まれそうな温かさを感じるキーマカレー。辛さもそれほどではなく、これなら辛いものが苦手な女性や子供でもOKだろう。かと言って、スパイスをきちんと使ったことも感じられる奥の深い味付け。
で、食べ進むとライスの中から半熟卵が顔を出すのがお茶目(笑)。カレーと卵っていうのは相性いいんだよね、実は。吉祥寺の「まめ蔵」とか、渋谷の「ムルギー」とか、ゆで卵をカレーに添えて出している店はけっこうある。だけど、半熟はけっこう珍しいんじゃないかなあ?それも、黄身がとろっと外へ流れ出さない絶妙の茹で具合だった。これだと、そのまま食べても良し、黄身をカレーソースに絡めてまろやかな風味にして見るのも良し、好みで2パターンの食べ方がチョイスできる。よく考えてあるなあ~と思った。

2日目はぜひ店主さんと話がしてみたいと思い、お客さんが引けていそうなランチタイムの終わりの時間帯を狙ってみた。
昨日と同じようにカウンターに腰掛け、マスターに「一番南インドっぽいカレーが食べたいんだけど…」とリクエストしてみたら、「ポークとたっぷり茄子の辛口カレー」ってのを薦めてもらった。

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これも美味かった…。インドカレーらしいサラサラのカレーソースに、控えめなスパイスの下味が口の中に残る。ポークはよく見かけるブロック肉ではなく、バラ肉を使っていたのが、却ってこのカレーの素朴な味わいを印象深くしてくれていると思った。深いイエローのソースに浮かぶ紺の茄子との彩りもよく、南国風に調度されたお店の内装とも相まって、なんとも心地よい午後の空間を作ってくれた。

オレ、この日は結局一時間ぐらいお店に居たのかな…。厨房に入っていた30代半ばぐらいと思われるマスターは、奇しくも自分と同じ姓。やはりこの町の出身だというから、ひょっとして遠い親戚かも(笑)。そんなこともあって、一気に話が弾んでしまったのだ。
厨房にはマスターも含む男性2人とアルバイトらしい女性が一人。男性2人、顔つきがよく似ていると思ったら案の定兄弟だそうだ。この場所に兄弟でお店を開いて3年になるという。店内にはブラック・ミュージックのレコードジャケットが品良く飾ってあったので、それも気になって聞いてみたら、お兄さんのほうは時々DJもやっているとのこと。内装のセンスの良さやBGMの趣味はそういうお兄さんの趣向が反映されているんだろうと思った。

夜はお酒を出してバーのような形態でやってるというから、きっとソウル・バーみたいな雰囲気になるんだろうなあ。
とにかく、すごく居心地のいいお店。オレみたいな人間にとっては、行く先々の町でこういうお店を知ってるってのは本当に嬉しいことなのだ。オレらの世代は、旅先で夜を過ごす時、ポン酒をぐいぐい飲りながら土地の珍味を…みたいな飲み方にはまだ早い。ましておネエちゃんがにじり寄ってくるような店もちょっと勘弁だ(苦笑)。そんな夜を過ごすんだったら、気の効いた音楽が流れる小さなお店で、店主と軽い会話を交わしながらゆっくりジントニックを…、みたいに考える連中のほうが多いと思う。
うん、ここならそんな夜が過ごせそうだ。よーし、次回は夜、行ってみるぞ!

何はともあれ、この不景気な時代、福島みたいな保守的な町で飲食店を営むことがどんなに大変なことかは、素人のオレでもよくわかる。そんな中、この若い兄弟はカレーを通じていろんな人との繋がりを持つ夢を抱きながらお店を営んでいるようだ。市内の野外イベントへ出店を出してみたりするのも、そんな試みのひとつなんだろう。
こんな素敵なお店が地元にできたことが、オレは素直に嬉しい。そして、オレはこの町を出た人間だけど、町に残った若者たちがこんな素敵な食文化を育てていることも嬉しく思った。

福島市大町のカレー屋「笑夢」、もし福島に行く機会があったら是非寄ってみて欲しい。
厨房から南国の太陽のような笑顔を浮かべた2人のナイスガイが出迎えてくれるはずだ。

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