【CHABO SOLO ACTION The Moon Struck One 2018年11月17日(土)東京・南青山MANDALA】
難しい時期のライブ。正直、なんでこんな時に…と、CHABOもファンも複雑な思いでこの日を迎えたはず。ただ、2009年の5月もそうだったけど、このデリケートな夜が気心しれた南青山MANDALAでのライブだったのは、不幸中の幸いだったかもしれない。
難しい時期のライブ。正直、なんでこんな時に…と、CHABOもファンも複雑な思いでこの日を迎えたはず。ただ、2009年の5月もそうだったけど、このデリケートな夜が気心しれた南青山MANDALAでのライブだったのは、不幸中の幸いだったかもしれない。
仲井戸“CHABO”麗市×石橋凌「SOUL TO SOUL」
公演日:2012年8月19日(日)開場17:00 / 開演18:00
出演アーティスト:仲井戸"CHABO"麗市 × 石橋凌 with 藤井一彦(G)
会場:南青山MANDALA
80年代にあれほど日本のロックに夢中になっていたにもかかわらず、実はワタクシ、ARBはほとんど聴いたことがございません(苦笑)。あの頃あったいくつかのロックイベントのTV放送で、マイクスタンドに片手をかけて歌う石橋凌の姿はぼんやり憶えている。もしかしたら、忘れてるだけで実際にどっかのイベントで見たこともあるのかもしれない。ただ、ARBは社会的なメッセージを歌う硬派なイメージが強くて、RCやスライダーズみたいなルーズなノリが好きだった僕としては、なんとなく敬遠したくなるタッチがあったことは確かだ。今でこそRC、ARB双方のファンだと公言する人は多いけど、当時はそんなことはなかなか言えなかった。あの頃は若さ故のヘンなこだわりやファン同士の妙な派閥があり、少なくとも僕の周りでは、あのバンドもいい、このバンドも好きなどとは軽々しく口にできないような環境があったのだ。その点、今の若者たちは僕らのころよりよっぽど自然体で音楽に接していると感じる。フェスでいろんなバンドの演奏をシェアして楽しむ若者を観ていると、いい意味で時代が変わったことを感じてしまうのだ。
閑話休題。そんなわけで、僕はこの日久々に観るCHABOのソロライブとともに、40過ぎてやっと先入観なしに観る機会を得た石橋凌の歌をとても楽しみにしていた。
ライブは1部が石橋凌のソロ、2部がCHABOのソロ、アンコールがCHABOと石橋の共演という3部構成。これはCHABOが昨年行っていた「恩返しシリーズ」と同じだ。
1部、CHABOに呼びこまれ石橋凌がステージに現れる。その姿は、僕が想像していたよりもずっと穏やかに映った。最近は映画俳優としてもちょくちょくこの人を見かけていたが、その役柄も眉間に皺を寄せるようなものが多かったから、ARB時代と同じように、相変わらずの硬派な男のイメージをこの人には持っていた。ところが、目の前にいる石橋は穏やかな笑みを浮かべた好紳士。昔と比べるとだいぶ恰幅が良くなっていたが、それもこの人が積み重ねてきた年季を感じさせ、かえっていい味が出ていた。“ああ、いい歳のとり方してるなあ~”ってまずは思ったな。
石橋はステージ中央のスツールに腰かけると、サポートで入ったギターの藤井一彦を傍らに、じっくりと歌いだす。正直言って、僕は彼の歌をほとんど知らないが、一声聴いて圧倒されてしまった。スゲエじゃん!ロックボーカリストというより、ソウルシンガーみたいに熱い歌い方だ。そうかと思うと、MCでは意外なほど茶目っ気たっぷりな部分も披露し、観客の笑いをとってしまう。なんて魅力的な人なんだろう…。たぶん、この日の会場には僕以外にも石橋凌をあまり聞いたことのない人がたくさんいたと思うのだが、彼の全然気取りのないチャーミングと言ってもいいその姿に誰もが惹きこまれてしまっていたはずだ。
セットリストはARB時代の曲と、去年リリースしたソロアルバムからのものが中心になっていた。
ソロアルバムの曲は、石橋凌曰く“プロデューサーに目の前に映像が浮かぶようなアレンジにして欲しいとお願いした”とのことだが、歌を耳にしてその言葉どおりだと僕も思った。これは、楽曲もそうなんだけど、石橋凌のボーカリストしての表現力の成せる業なんだと思う。歌われているテーマは重いのに、曲調がとてもポジティブなのも良い。昔からARBを観ている人が今の彼をどう思っているかはわからないけど、僕はこの日のライブを見ていて、なんとなく彼が役者という道に進んだのがわかるような気がした。これは役者をやっているからこその表現の豊かさなんではないだろうか?なんだあ~こんなに素敵なボーカリストだったのなら、先入観なんか持たずにもっと早くから聴いていれば良かった(苦笑)。
サポートに入っていた藤井一彦のプレイもGOOD。花柄のシャツでキメた一彦は、この日は終始アコギでのバッキング。曲によってはブルースハープでソロも取る大活躍。僕はグルーヴァーズも大好きなので、欲を言えば1曲ぐらいエレキを弾いてくれるともっと良かったけど、贅沢は言わない。ソウルフルなボーカルを盛り立てる、素晴らしいフレーズを存分に聞かせてくれた。
1部はだいたい1時間ぐらい。石橋凌の魅力を充分に味わった。
ここでいったん休憩が入ったが、この日は長尺ライブになることを想定してか、普段よりだいぶ短い時間で場内が暗転する。トイレの列に並んでいたお客さんが、慌てて席に戻っていった。
オープニングは「BLUES 2011」。アコギを手にしたCHABOが気ままにギターを爪弾きながらつぶやくようにボーカルをとる。続く「つぶやき」もそうだったが、のっけからディープなCHABO流ブルースの世界が展開されていく。「つぶやき」は“ジェームス・ディーンはどこに消えたんだ? ウィルソン・ピケットは… ロバート・ジョンソンは…”と畳み掛けていく、最近のCHABOの歌詞によく見受けられる、今の時代への違和感が歌いこまれたナンバーだった。
いつものようにカバーも多い。フジロックで披露したという「ルイジアナ・ママ」は、オリジナルというより飯田久彦の日本語バージョンでの演奏。続けてライジングサンのthe dayで演奏したという「The Harder They Come」。こんなミディアムな曲を中村達也と演奏したってのはちょっと意外な感じだが、ジミー・クリフをCHABOがやるってのはなんとなく解るような気がする。
そして、ARBのカバーで「ウィスキー&ウォッカ」。これはオリジナルは知らないのだが、アメリカとロシアのドンパチを酒場でのいざこざに喩えていて、完全にCHABOの世界に仕立て上げられたアレンジになっていた。最近のCHABOは誰かと共演するとき、その人の持ち歌をカバーするのが恒例になっているが、この日のこれはハマり具合でいえばかなり上出来だったんじゃないのかなあ?
僕的にこの日最大のヤマ場はこの次からの3曲だった。
CHABOが“じゃあ、ここでキヨシローくんの夏を…”と、おもむろに口を開くと、場内の照明がゆっくりと落とされ、CHABO独特の夏の慕情が展開されていった。まず歌われたのは「忙しすぎたから」。外の猛暑をしり目に、太陽ギラギラだけでない陰りを帯びた夏の心象風景が描き出される。思えば、こういう世界観があるのが清志郎の、そしてRCサクセションというバンドの魅力だった。日本の8月は死者や過ぎ去った日々に想いを寄せる季節でもある。CHABOの歌声を噛みしめるように、歌の世界に入り込んだ。
そのあと、CHABOはインストで“エデンの東”を演奏。これが物凄くぐっと来たんだよなあ、オレ…。なぜ、今日このライブで、清志郎の歌の次にこの曲を続けてやったのかはわからない。もしかしたら、これにもCHABOと清志郎だけが知っている秘密があるのかもしれないし、子供の頃はR&Rと共に映画音楽を良く聴いていたという、石橋凌に捧げる気持ちもあったのかもしれない。
そして、街の雑踏をSEに歌われた「My Home Townの夜」。これはぐっときた。この曲を初めて聴いたのは、ビルボード東京で行われた3Gでのライブだったと思うが、ずばり名曲。故郷の街でのある日の夜に、変わってゆく時代と、自信の孤独を滲ませた苦い歌詞が胸の奥にすーっと落ちてゆく。
ラストに久々に歌われた「R&R Tonight」も含め、この日のCHABOには、なんだか夏をキーワードに、自身の記憶を遡りながら現在の立ち位置を今一度確かめているようなタッチを感じた。
アンコールは一転して楽しいCHABO×石橋凌のセッションタイム。
サプライズは、明日の出演が予定されていた伊東ミキオが登場したこと。確かにステージ奥にはグランドピアノが用意されていたけれど、てっきりそれは2日め、3日め用の準備だと思っていたので、これは嬉しかった。赤いコンポラスーツで登場したミッキー、久々に見る気がするけどやっぱり若いころの清志郎に似てるなあ~(笑)。
セッションは「ROUTE 66」や「GOT MY MOJO WALKIN'」など、二人の共通のルーツと思しきスタンダードが次々に飛び出す楽しさ満点のステージとなった。
でも、やっぱり僕がグッときたのは、「横浜ホンキートンク・ブルース」だなあ…。これが今日聴けるとは夢にも思わなかったし、これをCHABOが演奏するとも夢にも思わなかった。この曲は、僕にとってはやっぱり松田優作のイメージが強い。生前の優作と親交のあった石橋凌にとって、これは大切な曲なんだろう。CHABOと藤井一彦がそれぞれソロを取り合うのも聴きものだった。
この後、「いいことばかりはありゃしない」に続いて、「STAND BY ME」という、もうこれ以上ないぐらいに贅沢なセッション。最後の最後は、CHABO自身がどうしても聴きたいということで石橋凌による「SOUL TO SOUL」。うーん、素晴らしい…。
全ての曲が終わると、いつものCHABOのライブ同様、恒例の「What A Wonderful World」が流れ、全員がステージ中央に並んで深々とお辞儀をする。この時、観客は彼らが頭を下げたタイミングで立ち上がるのがお約束なのだが、この日はステージでCHABOたちが並ぶともう観客がスタンディング・オベーションしてしまっていた。これは、それだけこの日のライブが素晴らしく、観客が感動した証ではないかと思う。
80年代からシーンを走り続けてきたCHABOと石橋凌の2人にとって、そして、二人を見続けてきたファンにとって、この夜はまるで旧友と再会する時のような嬉しさに溢れていたはず。
そして僕は、まるで昨日のことのように思っていた80年代がこんなにも遠くになってしまったことと、CHABOと石橋凌がいつの間にかこんなにも大きな存在になってしまったことに気付き、ちょっとため息が漏れてしまったのであった。
Thumbs Up 14th ANNIVERSARY LIVE 祝! ThumbsUp 『Jumping!! Night!! 』
出演:仲井戸"CHABO"麗市 with 早川岳晴
OPEN17:00/START18:00/ADV¥6000
うん、これぞCHABO!このところイベントや他のミュージシャンとの共演ライブが続いていただけに、久々にCHABOの世界を堪能できたように思う。去年一年かけて行われた“恩返し”シリーズも悪くはなかったんだけど、あれを見ていると、僕はどうしてももっとCHABOのソロを長く聞きたくなってしまって軽く要求不満になってしまっていた(苦笑)。そんな渇望感は、きっと僕だけではなかったんだと思う。会場のサムズアップはとにかくすごいお客さんの数だった。サムズアップには何度も来ているけど、うーん、ここでこれほどのお客さんを見たのは初めてかも。ここは基本的にテーブル席でゆったり食べたり飲んだりしながら音楽を聴くお店なのだけれど、この日は会場後方のテーブル・椅子が最初から取り払ってあり、あらかじめ立ち見スペースを確保してあった。でも、そこもあっという間に人で埋まり、店内は立錐の余地もないぐらいの熱気だったのだ。
そんなお客さんの期待に応えるように、CHABOのプレイは最初からキレキレだった。このところライブが続いているためか、声も良く出ていて、いい意味でリラックスしているようにも見えた。このいい意味での余裕は、ライブが完全なソロではなく、長年のパートナー早川岳晴とのデュオスタイルだったことも大きかったんだろう。「ギブソン(CHABO'S BLUES)」に代表されるように、早川さんが隣にいると、CHABOのギターは明らかに手数が多くなる。やっぱり、この二人のコンビネーションは最高だ。CHABOが心から早川さんを信頼してギターを弾きまくってるのがよくわかる。
セットリストは、2010年に二人で全国を回ったGO!!60ツアーのものがベースで、そこに新曲やカバーを足していったような感じだった。休憩なしで二時間半はCHABOんしては短いという印象を持った人もいたかもしれないが、僕はかえって凝縮された内容になっていて良かったと思う。
新曲は、CHABO曰くヴァン・モリソンを意識したという「つぶやき」という曲。こいつがまた最近のCHABOには珍しいぐらいに土臭いブルースで、ファンは大喜び。早川さんのウッドベースとCHABOのギターの絡みもスリリングで会場はぐっと盛り上がった。
カバーでは、ザ・バンドの曲が心に残った。この日はライブ終了後のSEもザ・バンドだったし、MCでもザ・バンドについてかなり多く話をしていた。元メンバーのリヴォン・ヘルムが4月に亡くなったばかりだからだからなのだが、CHABOはこの訃報が残念でならないようだ。
CHABOの話を聞いていて、僕はCHABOのザ・バンドに対しての想いは、彼らの音楽に強く惹かれていることはもちろんだけど、忌野清志郎との思い出と重なっている部分も大きいんだろうなあと思った。たとえば、ザ・バンドのオリジナル「The Moon Struck One」にCHABOが日本語詞を付けた曲のタイトルは、「僕らのビッグピンク」だった。かつてザ・バンドの面々がウッドストックに籠って自分たちの音楽を作り上げていたのを、清志郎と時の経つのも忘れて曲作りに励んでいた若き日の自分たちに重ねたに違いない。
CHABOのライブには、こういう生きていく上での切なさや、過ぎて行く時間を慈しむような瞬間がある。こういう、胸に迫ってくるような哀愁は、他のミュージシャンのライブではなかなか味わうことができない。RCナンバー「君が僕を知ってる」は、客とCHABOが一緒に歌うのだが、こういう空間は、一緒に歳を重ねてきたファンを多く持つミュージシャンだからこそ成り立つものだ。この歌を歌うのが一番似合う人は、もうこの世にいなくなってしまったけど、歌そのものはこうやって生き続けていくものなのだ。僕自身は、RCの曲も前よりだいぶ落ち着いた気持ちで聴き、口ずさむことができるようになってきたと思っている。人生ってのは楽しいことやうまくいく場面ばかりじゃない。こういう哀しみを抱きながらも生き続けることが大人になるっていうことなのかもしれないなあ…。そんなことをふと思った。
全体的にじっくり聞かせる曲が多かった印象があるけれど、もちろんしんみりする展開ばかりではなかった。アンコールで演奏された「Route 66」やマーサ・アンド・バンデラスの「Dancing In The Street」は、客とのコール・アンド・レスポンスも含めて盛り上がった。
「Dancing In The Street」は、早川さんのエレキベースも聴きものだ。IbanezのMCはぶっとくて大蛇がとぐろを巻くような重低音を響かせる。GO!!60ツアーでもそうだったけど、僕はこの曲を弾く早川さんが大好き。まるでシンセベースみたいな音色でぐねぐね動くベースラインは、この曲が単なるモータウン・カバーに陥らず、独特の浮遊感を持ったアレンジになることに成功していると思う。
ラストの「Hobo's Lullaby」までぴったり2時間30分。CHABOの魅力がぎゅ~っと凝縮されたような良いライブだったと思う。
他のミュージシャンと一緒にステージに立つCHABOもいいが、今年は単独名義でのライブもたくさんみたいなあと思わされる夜だった。
大満足のライブだった。既にツイッターなんかでもいろんなところでつぶやかれてるように、アンコールでマーシーやこれまでの恩返し共演者が飛び入りするというサプライズもあったが、僕にとっては本編のCHABOとせっちゃんそれぞれのパートだけでも充分元を取ったと思わせるぐらい濃密だった。
まず、斉藤和義。オレ、やっぱりこの人が好きだ!なんと言っても曲がいい。決定的に曲がいい!必殺のリフにキャッチーなメロディー、心に刺さる歌詞。それを研ぎ澄まされたギターと色っぽい男声で唄う。この爽快なわかり易さは、ある意味忌野清志郎の楽曲の魅力と共通していると僕は思う。
2日前に武道館公演というツアーのハイライトを終えたばかりのせっちゃんは、この日は高音が出難そうで決してベストコンディションではなかったが、気合は充分。初っ端の「Summer Days」から、あっという間に彼の世界に引き寄せられた。
最新作の「45 STONES」 からは「ウサギとカメ」「ギター」「僕と彼女とロックンロール 」「猿の惑星」の4曲がプレイされたのだが、弾き語りで唄われたこれらの曲はアルバムのバンドアレンジより、もっと生々しく響いてきて切迫感を持って耳に届いた。
個人的には「Are you ready?」が一番印象に残ってるなあ。これ、個人的には数ある斉藤和義の曲の中でも一・二を争うぐらい好きなのだ。なんつっても歌詞がいい!
街には空っ風が吹いてる 胸には闇が寝転んでる
この景色はいつか見た気がして 車飛ばしてる 初めてを探しに
Are You Ready?さよなら 欲まみれのガラクタ
Are You Ready?飛び込め 今ならまだ間に合う
本当に欲しいものは エキサイトする心臓だろ?
思わずフレーズを書き出してしまったけど、恥ずかしい話、この曲を聴いてると時々泣きそうになってしまうのだ。大人になった元ロック少年でこんな気持ちを胸に抱きながら毎日を生きている人は多いんじゃないかな…。同世代が作るR&Rとして、このヒリヒリ感はリアルすぎる。何一つ文句の付けようがない。
この曲から続けて金縛りにあったようなフレーズで紡ぎだされた「やさしくなりたい」。これも同世代的な叫びに溢れた名曲だ。決してドラマのために書かれた甘い楽曲なんかじゃない。そして、ギブソンのセミアコ斉藤和義モデルを手に歌われた「ずっと好きだった」。この3連チャンが僕にとってのハイライトだったかな。
約1時間の弾き語り。RCの(というよりCHABOの)楽曲「うぐいす」を挟んだ以外は、全部最近の自分の持ち歌からの選曲だったが、そのカジュアルさが逆にこの人らしいと思った。
せっちゃんが舞台袖に消えると、客電は落ちたままでステージ転換。これがかなり早く完了して、トイレに立った人があわてて席に戻る。
CHABOは「よォーこそ!」でライブをスタートさせた。これはショートバージョンで腕慣らしといった感じ。その後にいきなり「エネルギー oh エネルギー」が来たのはちょっと驚きだった。今日はRC定番で攻めるのかな?と思ったのもつかの間、次はマンフレッド・マンのカバーで「シャ・ラ・ラ」。さらに「清掃の唄」と続く。かなり地味な選曲といっていいだろう。正直言って、僕はこの辺までCHABOの意図が掴めず、いまいちライブに乗り切れない感じではあった。
だが、恩返し恩返し恒例のゲストの持ち歌カバーあたりから“おおっ!”となってくる。僕は、このコーナーでこの日CHABOが何を唄うのかとても楽しみだった。CHABOのことだから、何かマイナーな楽曲を引っ張り出すんだろうなあと思ってたら、いきなりど真ん中の「僕の見たビートルズはTVの中」ときた(笑)。でも、後から考えたら、この曲に関しては、前々からCHABOはいろんなとこイイいい曲だと褒めてたっけ…。CHABOはちょっとシャッフル気味にギターを爪弾く。唄い終えると“俺の見たビートルズは武道館”とか“歌詞の中のおじさんが斉藤君にとってのオレなんだろうなあ…”なんていうMCもあって、CHABOのこの曲に対する想いが垣間見れた。
この後、ステージの照明がゆっくりと落ちていき、会場はCHABOと清志郎が出会った頃の渋谷の空気になっていく。この日は、雑誌「詩とファンタジー」清志郎特集でCHABOが寄せたコメントを冒頭に朗読。この文章は個人的にとても思い入れのあるものなんで、CHABOの口からリーディングされるのを直に聞くのは激しく心を揺さぶられる体験だった。
ぼくはここにいる
ぼくはここにいる
清志郎の歌の多くは、そのバリエーションの幅であり叫びだった…。僕も100%そう思う。
続けて、古ぼけたブルージーなイントロに続いて、“出かける途中のバスの中で…”とおもむろに唄うCHABO。「もっとおちついて」。アコースティックだった頃のRCがその悶々とした青春の日々を歌いこんだような曲を聴いていると、なんだか自分が今何処にいるのかわからないような感覚に陥った。CHABOが続けて「ダニーボーイ」を爪弾いたのも、強く印象に残っている。鎮魂歌…。そんな言葉が頭に浮かんだ。
この後に唄われた「いつでも夢を」もすばらしかった。個人的にはこれがCHABOのステージでのハイライトかな…。もはや、今のCHABOのモードはロックとかブルースとか、そういうフォーマットに納まりきれないぐらいに大きくなっているんだとしみじみ思った瞬間だった。明らかに3.11後の世界に対してCHABOが抱いたある種のフィーリング、それがこういう選曲に繋がっているんだと思う。曲はブルージーな味わいにしっかりとアレンジされ、CHABOの歌声も力強かった。ラストの「ガルシアの風」との繋ぎも違和感全くなし。
CHABOのパートは斉藤和義より少し長く、1時間半近かったと思う。気が付いたら定番の曲はあまりなく、ファイナルにしてはかなり地味な感じ。でも、それが逆にCHABOらしいといえばCHABOらしいと思う。
アンコールは恒例のセッション大会。「テキトーBLUES」は、せっちゃんのボーカルに入るタイミングが微妙にズレるのが面白く、CHABOもステージでずっこけて見せる(笑)。でも、2人とも凄く楽しそう。前日のリハーサルで2人はギター話で大いに盛り上がったそうだが、それをそのまま音楽で再現したような感じだ。こういうの見てると、ミュージシャンはいいな~って思ってしまう。
この後、今日最大のサプライズが待っていた。“共通の友達が来てくれた~!”っていうCHABOのMCで登場してきたのは、この日近くのAXでクロマニヨンズのライブを終えたばかりの真島昌利。上半身裸で黒の革パン、頭にはバンダナといういつものスタイルで登場してきたマーシー、やっぱカッコいいや!
CHABO、斉藤和義、マーシーの揃い踏みはやっぱし華があった。3人でプレイしたのは、ギタリストらしく「ギブソン」。続けてビートルズのカバー「I SAW HER STANDING THERE」。これは斉藤和義がオリジナルの英語詞でボーカルをとり、CHABOとマーシーはバッキングに徹する。途中、マーシーが“カモン、ジョージ!”というCHABOの掛け声でブレイクをとるという美味しいシーンもあり、最高に盛り上がった。
それから、CHABOがリクエストしたというせっちゃんの持ち歌「男節」。これも嬉しかった。オレ、大好きな曲だからなあ、これ。っつうか、これは斉藤和義ファンでも好きな人が多いんだろう、客席から嬌声が起きた。この曲のアコギバージョンをライブで聴くのは初めてだったんだけど、CHABOお得意のメロディアスなスライドが実に良かった。いや~最高!“ほんとはお前と…。”むむむ、うちの奥さんにもこんなこと言ってみてえ…(笑)。とにかく「男節」最高!せっちゃん、最高! 続けて演奏された「上を向いて歩こう」で2人は袖に一度引っ込む。
この後のことは、いろんな人がいろんなところでつぶやいたとおり。これまでの恩返しシリーズの出演者がステージに登場。奥田民生、YO-KING、寺岡呼人、浜崎貴司、Leyona…。オレ、実は、おお、ここで「雨上がり」か~!?なんてと思ってたんだな(苦笑)。なので「歩いて帰ろう」が演奏され、客席で一人盛大にずっこけてしまった(笑)。でも、これ、すごく良かったなあ!飛び入りの5人もすごく楽しそう。ギターソロを弾くCHABOを民生とYO-KINGが両サイドから盛り上げたりしてて、見てるこっちも思わず頬が緩んでしまった。最後は寺岡呼人が中央で高々とジャンプして終了。
終わってみたら、時計は10時50分。実に4時間近い長尺ライブだった。
さて、恩返しシリーズが終わった。昨年はこれとイベントものがほとんどだったCHABOが、次にどんなものを出してくるか。それを僕は大いに期待したい。
寒い冬ももうすぐ終わる。春一番が吹く頃には、CHABOの新しいスタートが見られるかな…。
素晴らしいライブだった。これまで僕の見てきた恩返しライブの中でも、濃密さは間違いなくNo.1。これまでは、ライブが終わると、もう少し長くCHABOを見たいなあ~という気持ちがどうしても生まれてしまい、100%満足して帰路に着いていたわけではなかったのだが、今回はまったくそんな気持ちは起きなかった。これは、この夜のステージが、純粋にジョイントライブとして高い完成度にあったという事だと思う。2人の持ち味が十二分に発揮された、本当に素晴らしいステージだった。
正直言って、僕は開演前はこのライブがこれほどのものになるとは思っていなかったのだ。これはCHABOのステージングの素晴らしさはもちろんだが、浜崎貴司という男が、僕の予想をはるかに超える素晴らしいソングライターだったことが大きい。僕の彼に対する知識は、イカ天出身バンドのボーカリストといった程度。もちろん、OK!!! C'MON CHABO!!! でボーカリストとしての力量はわかっていたつもりだったが、ソロのステージには強い衝撃を受けた。いやあ、この人がこれほど素晴らしいシンガー・ソング・ライターだったとは…。
浜崎の弾き語りには本当に圧倒された。
1曲目は数年前に彼がスランプに陥っていた時、渋谷のスターバックス2階席から眼下のスクランブル交差点を眺め、半日かけて書き上げたというヘヴィ・ブルースだったのだが、これがもう凄かったのだ。アコギをかき鳴らしながら、当時の心境を赤裸々に吐露した重い歌詞を、圧倒的な声量で歌い上げる。のっけから心臓を鷲づかみにされた。
その後も、浜崎はカバーや自曲を次々に歌いこんでいく。カバーではCHABOの「ガルシアの風」や、斉藤和義の「虹が消えるまで」も出た(MCでは“小泉今日子の…”と紹介されていたが)。
浜崎の持ち歌は、はっきり言ってそのほとんどが重く暗い。決して一般受けする歌ではないかもしれないが、僕はその内省的な世界にぐいぐい引き込まれていった。この日セレクトされた曲が、彼のバンド、フライングキッズのレパートリーだったのか、ソロで書いた曲なのかはわからない。だが、そのどれもが僕がフライングキッズに対して抱いていた、シニカルな男目線をファンクビートで歌い込むといったイメージとはまったく違った歌たちだった。もっと赤裸々で生の感情を吐き出した、血を流したような歌…。
特に印象に残ったのは、ラストに唄われた曲だ。タイトルは忘れてしまったが、僕はこの曲にかなり揺さぶられた。何よりも歌詞が素晴らしく、僕は忘れないようにと、その一節を手帳に書き留めたぐらいだ。こういうことは僕には本当に珍しい。
失速する時代に背を向け 我がための真実を追いかけろ
秋の黄金色の小麦のように 君は満たされてく
息が詰まるほど胸を焦がしたら
とどまることを知らない 前しか見ぬ馬鹿であれ
浜崎の歌からは、日々の葛藤に悩み、未来への不安に苦しみながらも、大切な人との大切な瞬間を大事にしていきたいと願う一人の男の姿が浮かんでくる。これは紛れもないブルースだ。久々に邦楽アーティストの曲を聴いてガツン!ときた。なんとなく、古井戸初期のステージはこんな感じだったのではないだろうかと思ってしまったぐらいだ。
さて、CHABO。CHABOのステージも浜崎に負けず劣らず凄かった。
オープニングは麗蘭の去年のツアータイトル曲「Love Love Love」。客席に手拍子を煽りながら陽気に演奏していくが、その歌詞は“世界に、君に、愛は足りているかい?”と問いかけるもの。歌を聴きながら、今の僕らの暮らしを振り返らざるを得なくなる。
そう、この日のCHABOのセットリストは、師走っぽいもの、クリスマスが唄いこまれたものなど、CHABOお得意のシーズンソングも多かったが、ヘヴィだった2011年に対しての想いをこめたものにもなっていたと感じる。しかも、それは奇しくも浜崎貴司のセレクトした曲と違和感のないトーンになっており、もしかしたらこの日の恩返しは、各々のソロステージでの選曲も含めて、全体のトーンを見渡してかなり周到に考えられたものだったのかもしれないと思った。
びっくりしたのは、RCナンバーの「まぼろし」が唄われたことだ。この歌の前に、CHABOは、結果的に恩返しシリーズでは毎回RCの曲を歌ってきたが、それはPLEASURE PLEASUREが清志郎と出会った街、渋谷にあるので自然とそういう気持ちになると話していた。また、最近雑誌の取材で「青い森」のあった辺りに行く機会があり、店はもう無いが当時の雰囲気はまだ微かに残っていて、今にも清志郎が出てきそうだったとも語っていた。
はじめて聴くアコギ・バージョンの「まぼろし」。この曲は、実は収録されたアルバム「BLUE」よりもかなり昔に作られた曲だったことは、ファンの間では有名だが、当時のアレンジもこんなだったのでは?と思わせるような生々しさがあった。
ラスト2曲もなんだかとても象徴的だった。
まずは、ものすごく久しぶりに唄われた「労働歌」。CHABOはまったくギターを弾かず、まるで農民が土を耕すかのように、アコギのボディを拳で叩きアカペラで歌詞をシャウトする。そして最後は「Are You Alright?」。僕は、この2曲は3.11以降のCHABOの想いを現したように思えてならない。「労働歌」は様々な思いをかき消してしまうほどの圧倒的な現実に直面した今年、ミュージシャンとしてどう生きていくべきか、自分の立ち位置をもう一度再確認するようなニュアンスを感じたし、「Are You Alright?」には、この迷える時代に生きる僕たち総てに対しての慈しみだと思った。
ここまでが本編。ここまででも十二分に大きな手応えのあるライブだったのだが、この日は第二部と呼んでもおかしくない長いアンコールがあったことで、その良さがさらに引き立った。
アンコールは、各ソロステージでの重たいタッチとは雰囲気が一変。浜崎にいたっては、ステージに出て来た時の表情からして違っていた。まずは恩返し恒例の「適当ブルース」。これがむちゃくちゃ楽しかった。ギターの絡みはもちろんだが、お互いの即興で付ける歌詞が最高に可笑しくて、CHABOも思わず“恩返し史上、一番変だ!”と苦笑い(笑)。
それから浜崎の持ち歌でファンクナンバーを2曲。これは歌詞も含めていかにもフライングキッズらしい曲。CHABOはアコギでバッキングに徹していたが、2曲目のワウペダルを使ったソロはシビレた。Glad All Overでの名演「ボスしけてるぜ」を髣髴とさせるようなギターだった。
それからなんと、この日は2人の共作も披露された。「僕らのメリークリスマス」と名付けられたその曲は、シンプルな歌詞にクリスマスの様々な場面が歌いこまれる、とても心に残る曲だったな。CHABOは演奏終了後、“来年のクリスマスも、浜ちゃんとこれを歌うのを楽しみにしてる”なんて言ってたけど、そんなに待てないぞ(笑)。なんとかレコーディングできないものかなあ…。ライブだけじゃあ、勿体無いぐらいの名曲なんだから…。
この日の恩返しは10分押しで始まったのだが、終わってみると10時半近い時間。たっぷり3時間近くあったわけで、他の回と比べても長いライブになった。
この2人、恐らくこれだけでは終わらないだろう。ステージでのCHABOの表情を見ていると、彼が歳の離れた浜崎貴司という男をシンガー・ソング・ライターとして心から敬愛しているのがわかる。なんとなく思ったのだが、CHABOは浜崎の歌に自分と似た世界感を感じているのではないだろうか。
僕も、この人の歌がどうにも気になって仕方がない。考えてみたら、浜崎貴司は今年46歳で僕とまったく同じ歳だ。そのせいか、彼の歌の時代に対する目線には、共感できる部分がとても多いと感じる。恩返しシリーズの最大の恩恵は、こうしてCHABOを通して、21世紀にRCチルドレンが繋がっていくきっかけを見つけることができるところなのかもしれない。
年末恒例の麗蘭ライブは、このところ京都磔磔の前に、Billboard Liveで東名阪ツアーを行うパターンが多くなってきた。
実は僕、Billboard Liveで麗蘭を観るのはこれが初めてだ。理由は単純、チケット代がバカ高いから(笑)。Billboard Liveはゴージャスな雰囲気で食事を楽しみながらゆったりとライブを観るのがコンセプトのようで、入場料金が高い割りには演奏時間が短い。入ったら入ったでメシやら酒やら湯水のように金を取られる(苦笑)。どうも純粋に音楽だけを目的にのこのこ出て行くような気になれないのだ。そもそそもこんなスノッブな所、オレのような人間が行ってもいいんだろうか…(苦笑)。
同じように、麗蘭に関しても、なんでわざわざこんなハイソな会場で演るのか理解に苦しむっていう思いがあった。麗蘭は酸欠になりそうなぐらいの狭いハコでくらくらしながら見るのがいいんじゃん。そんな先入観があったわけだ。
ところが、夏にここで3Gのライブを観て、Billboard Liveに対するイメージがコロッと変わっちゃったんだなあ(笑)。このハコの音響の良さには驚いた。鳴り過ぎず沈みすぎず、実に気持ちいいサウンドバランスで音楽が楽しめる。ステージも客席に近くて観やすいし、席もカジュアルシートなら、それほどバカ高いお金を支払うことにはならない。こりゃあイイやあ~と思ってしまったぜ。変わり身の早さは僕の身上(苦笑)。よし、こうなったら麗蘭も観に行っちゃおう!そう思って僕は今ここにいる(笑)。
1stステージは16:30というとんでもなく早い時間に開演。
オープニングは新曲だった。CHABOは年末のライブでは必ずと言っていいほど、その年に対する想いを織り込んだ新曲を演奏するが、今回は初っ端から新しいのをブチかましてきた。CHABOと蘭丸二人のギターリフを思い切り前面に出したストレートなロックナンバーだ。これが実にカッコ良かった!歌詞も“さよならだけが人生じゃないぜ というフレーズが何度も繰り返されるのがぐっとくる。個人的にも社会的にもいろいろなことがあったというCHABO自身の心境でもあるのだろうが、誰もがヘヴィだった2011年という年を振り返る歌になっていたのではないだろうか。年の瀬になって、こういうポジティブな曲が聴けたことは本当に良かった。
Billboardでのライブは、お尻の時間が決まってるから、ライブは正味1時間半ほどしかない。だからなのか、セットリストは最初からマスターピースのオンパレードだった。目新しい選曲はあまりなかったかもしれないが、これはこれでなかなか新鮮な体験で、僕は思いっきりのめりこんでしまった。
その理由として、麗蘭のライブをこれだけ音のいい会場で聴いたのは始めてかもしれないぐらい新鮮な体験だったことが挙げられる。とにかく音のバランスが良く、二人の弾くフレーズがはっきりと聴き分けられる。もちろん、磔磔だって磔磔でしか聴けない音があり、それはそれでとても好きなのだが、こと音の分離という点で言えば、間違いなくこれまで体験した麗蘭の中でもこの日がNo.1。いやあ~やっぱりCHABOと蘭丸の絡みはものすごいわ…。時にヘヴィに、時にグルーヴィーに、時にパーカッシブに、あうんの呼吸で音を紡いでゆく。その構造が手にとるようにわかるので、聴き慣れた曲でも僕はかなり興奮させられた。
1stからの「がらがらへび」が突然飛び出したのには驚いた。いやあ~Billboardでこんなヘヴィなブルースが聴けるなんて…。
ライブアルバム「宴」に収められたバージョンよりも、ややテンポが速くなっていた印象だが、これはリズム隊が若いJAH-RAHであることなども関係していたかもしれない。とにかく、バンドが一つの塊となって、ぐりぐりと音を捩じ込んでいくような感じ。こういうどす黒いヘヴィブルースがやれる日本のバンドは、なかなかいないと思う。
限られた演奏時間が凝縮された選曲に繋がったのか、この日麗蘭が演奏した曲は、ほとんどがロックっぽいナンバーかファンキーなナンバーだった。すごく濃い1時間半。うん、満足、満足。これだったら高いチケット代も気にならない。長けりゃイイってもんでもないんだなあ~ってつくづく思った。
麗蘭は今年で結成20年になったそうだ。なんか、10年目を迎えた時、磔磔で蘭丸が「10歳~!」って言ってたのがつい昨日のことのよう。2ndアルバムが出てからだって、もう7年も経ってるんだもんなあ…。そろそろ今の二人が作ったアルバムが聴きたい。来年あたりどうだろう?
仲井戸麗市 ONE NITE BLUES 61
【番外編:チャボのしっぺ返し】泉谷しげるBAND vs 仲井戸麗市BAND
at:Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
2011.10.6(THU)OPEN 18:15/START 19:00
仲井戸麗市BAND(B:早川岳晴/Dr:河村”カースケ”智康/Key:Dr.kyOn)
いやあ~最高だった!燃えた。燃えたぞっ!
泉谷が、「今日の内容は言うなよ。っつうか、オレが出てたこと自体言うなよ!」って言ってるから、内容を書くのはもう少し経ってからにしますが(笑)、やっぱバンドでバリバリ弾きまくるCHABOはたとえようもなくカッコいい!それが良~くわかった。
今年はバンドスタイルでの演奏も比較的多いCHABOだけど、今日は特にテンションが高かった。っていうか、ここ数年でもNo.1だったんじゃないか?
オレ、CHABOのライブで頭が真っ白になったのはほんとに久しぶり。ロックなCHABO、サイケなCHABO、ファンキーなCHABO、ん~やっぱバンドのCHABOは最高だ!はっきり言って、Japan Jamよりも野郎共の饗宴よりも良かったと思う。
どうだ、お前ら!これがオレたちが夢中になってきたCHABOなんだぜ!
それにしても、怒涛の5連チャンライブ、考えてみたらまだ初日だぜ。最初からこんなに飛ばして大丈夫なんだろうか!?(笑)
これは、この後の展開も俄然楽しみになってきたなあ~。スゲエぞ、CHABO!
早いもので恩返しシリーズも今夜で5回目。実はこのシリーズ、僕にとってはなかなか見方の難しいライブになっているのだ。数年前、Duoシリーズってのがあったけど、あれはあくまでもCHABOのソロが主体になっていた。だが、恩返しは共演はアンコールのみで、本編はゲストとCHABOのライブが完全に分かれた構成になっている。これがなかなかクセモノで、不器用な僕としては気持ちの切り換えが思うようにいかないことが多いのだ。正直言って、もっと長くCHABOを見たい。CHABOのソロパートが凄ければ凄いほど、今このときのCHABOの長尺のソロライブを渇望する気持ちが抑えられなくなってしまう。
この日のゲストは和田唱。これはなおのことライブに集中するのが難しい予感があった。何故って、この人はもともとLeyonaや寺岡呼人などとはCHABOとの関係性が薄い。正直言って、なんで件のトリビュートアルバムに参加したのかもわからない。なので、CHABOとの共演ということはあまり頭に置かず、トライセラトップスという一バンドのフロントマンによるソロライブ、と思うようにした。そう、夏フェスなんかでちょっと興味あるバンドのステージを覗いて見るようなタッチ。あまり難しく考えずにライブを見ようとしたのである。
この態度が功を奏したかどうかはわからないが(苦笑)、和田唱のライブは意外に楽しめた。
ライブはアコースティックギターを手にした完全弾き語りスタイル。アンプはCHABOのアンプを借用していた。一曲目はなんと「Crossroads」。CHABOファンのホームに乗り込むことを意識しての選曲だったのかもしれないが、真っ向勝負でぐいぐい攻めてきた。おおっ!という感じだ。思わず座り直してしまったぜ(笑)。和田唱、ギターもボーカルもなかなか聴かせる。ギターのフレーズは随所にブルースフィーリングを感じる小ワザを散りばめ、ボーカルも堂々たるもの。完全に和田ワールドを確立していた。
セットリストはオリジナルとカバーが半々ぐらいか。ブルースやR&Rっぽい曲だけではなく、ちょっとスィングっぽいノリもチラリで、なかなか達者なパフォーマーぶりだったと思う。トライセラトップスの持ち味であるファンキーなR&Rっぽさは抑え気味で、トラディショナルな音楽をリスペクトする姿勢が感じられた。
印象に残ったのは、最後に演奏されたバート・バカラックのカバー。うーん、この人、実はもっともっとたくさん音楽の抽斗を持ってるような気がするなあ…。実は、トライセラってのは、かなり“狙った”路線でやってるバンドなのかも知れない。
MCではCHABOと初めて会った時のエピソードも披露。福岡のFM局で会った時「君の書く曲好きだよ」と声をかけてもらったのを、「ミュージシャンとして、あの言葉はチャートで上位になることやいいセールスを残すことなんかより、ずっと嬉しいことだった」と本当に嬉しそうに語っていた。トリビュートアルバムで演ったCHABOのカバー「ポスターカラー」ももちろん披露。これがまた気持ちの入った歌とギターで聴かせた。
さて、CHABOのステージ。これがまた…。心にずしりと残る独特なタッチのライブになった。これだからCHABOのライブはどんな形態であれ、できる限り見ておかなければならないと思わせられちゃうんだよなあ…。
序盤こそ「Till There Was You」や「ムーンライト・ドライヴ」(「どっぷり重たいの演ります…」とCHABOは言ったが、それほど重たい印象は無し)、トライセラトップスのカバーなどで軽快に進んだが、中盤からはダークな晩夏のイメージにどっぷり。
まずは「じゃあ、ちょっと古いRCナンバーを…」と言って、Little Wingのフレーズをつま弾く。この時、もう一曲何がしかのフレーズを弾いた様な気がしたのだが、曲目不明。で、演奏されたのは「九月になったのに」だ。むー、こ、こんな曲が2010年の夏に渋谷で聴けるとは…。不意打ちとはこのこと。かなり効いた…。
そしてCHABOの口から語られたのは、最近、父親が亡くなったというヘビーな出来事。そして、最初自分が飼っていて、やがて父に預けることとなった愛犬“コロ”とその死の話だった。俳句を嗜んでいたというCHABOのお父さんがコロの死を詠んだ句を見つけ、CHABOが自身の歌にそれを織り込んだ共作という紹介で演奏されたのは「スケッチ '89・夏」。ダークでモノトーンな、夏の終わりの歌だ。2011年9月の渋谷の町に夏の終わりの物悲しさが漂っていく。
続いて演奏されたのはインスト「9月の素描」。うーん、こうきましたか…。「九月になったのに」から続いた“晩夏3部作”には、逝ってしまった人たちへの想いと、この世界に踏みとどまっている僕らの置かれた立場を考えずにはいられなかった。それにしても、CHABOにとっての夏ってどうしてこうへヴィーなことばかり続くんだろう…。
アンコール。いよいよCHABO+和田唱のセッションだ。
まずはお互いの名前を織り込みながらブルースの定番フレーズを弾きまくる「適当BLUES」。これは盛り上がった。新旧ジャパニーズ・ブルース・ミュージシャンの共演といったところ。さらにビートルズの「僕が泣く」とストーンズもカバーした「ROUTE 66」。このあたりはもう2人とも阿吽の呼吸でギターを絡めまくる。CHABOがこの日何度も言っていた“愛があれば、ギターがあれば、歳の差なんて…”を地でいくような場面だった。さらにRCナンバー「GIBSON」では交互にヴォーカルをとるのが一期一会感抜群。
最後の最後は、意外なことにCHABOの曲ではなく、トライセラトップスのナンバー「SPACE GROOVE」だった。これはトライセラトップスのライブでもあまり演奏されたことがないそうだ。CHABOがこの曲を選んだ理由は明白。歌詞の内容が今の社会のムードにぴったりだからだろう。これに繋げて「What A Wonderful World」のSEが流れるのは見事な構成だった。観客はごくごく自然にスタンディングオベーション。
終わってみたら、和田のソロパートでは意外なパフォーマーぶりを堪能し、久々にダークなCHABOの世界にどっぷり漬かり、アンコールで楽しく盛り上がり…と、懸念していた僕自身の切り替えも上手くいって(笑)、なかなか内容の濃いライブとなった。
それにしても、この日のCHABOのソロ中盤はずしりときたなあ…。
なんて言うんだろうか、CHABOのライブの凄さは歌とギターだけではないのだということを、今更ながらに強く感じた。歌とギターだけなら、この日は和田唱だって決してCHABOに負けていなかった。しかし、中盤のあの独特な世界はどうしたってCHABOにしか作れないだろう。
ある夜のステージに立つ時、CHABOはそこでその日にどうしても歌っておかなければならない歌があることを既に悟っているのだろう。それはCHABOにとって、どんな場であろうと、どんなライブであろうと、絶対に歌っておかなければならないのだと思う。それだけの決意をもってライブに臨んでいるからこそ、その歌はこんなにも心に残るのではないだろうか。
2011年9月16日。残暑厳しい夏の夜、渋谷の映画館のようなライブハウスで、CHABOは「スケッチ '89・夏」を歌った。そのことを僕はずっと忘れないでいようと思う。
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