ROLLING STONES

2012年11月22日 (木)

【映画】「クロスファイアー・ハリケーン」 / ローリング・ストーンズ


ローリング・ストーンズの活動50周年を記念して製作された映画、東京では新宿ピカデリーでやってるんでさっそく観てきた。

この映画、70年代初めごろのストーンズが一番カッコいい時期の映像がぎっしりだ。ロックバンドのドキュメンタリーってのは、バンドの歴史を最初から最後まで万遍なく追っかけるのが定番だけど、これは全体の比重を思い切り全盛期寄りで構成している。僕はまずこれが嬉しかった。
だって、いくらストーンズと言えど、今のキースのどアップを延々続けられたら、それはちょっとキツイっしょ(苦笑)。そもそも、盆尺なバンドのドキュメンタリーは、なんとか現役感を出そうとするためか、過去のフィルムの間に現在のバンドのメンバーのコメントを映像付きで挿入したりなんかしがちなのだが、これが僕は大嫌い。だって、どう考えたって全盛期と比べれば容姿の衰えは否めない。現役かどうかは、やっぱり実際のライブの音で判断すべきなんじゃないだろうか?
その点、ストーンズは潔いと思ったね(笑)。まあ、冒頭にはロンドンでプレミア上映をした時の映像が挿入されていて、そこにはメンバーの最新映像が映ってはいるんだけど、これは完全に本編とは分断されている。本編ではメンバーによる解説だってナレーションのみ。いや本当に潔いっすよ、これ。勇気ある撤退に拍手(笑)。

冗談はさておき、僕はストーンズの映像に関しては、公式から地下までかなりのものを見ている自負があるんだけど、そんな僕でもここで使われたものの中には、初めて見るものが多くてびっくりした。
特に、60年代のライブ映像でブライアン・ジョーンズのパフォーマンスがここまで長めにちゃんと映ってるものは初めて観た。いやあ~やっぱりブライアンは只者じゃない。改めてそのカッコよさにシビれてしまった。ただハーモニカを吹いてるだけなのに、そのアクションや投げかけられる視線にヤラれてしまう。
最初期の頃は、ミックはお坊ちゃん臭いし、キースは猿みたいだから(苦笑)、ブライアンのふてぶてしさが一層際立っている。このバンドは、明らかにスタート時はブライアン・ジョーンズがボスだったのだ。
それだけに、その後の衰え方は悲しい。ロックンロール・サーカス以降の廃人になってしまったかのような佇まいは、25×5なんかでも垣間見ることができたけど、この映画に出てくる映像は、それとは比較にならないほど生々しい。もう、このころのブライアンはただ生きてるだけ、ただそこにいるだけみたいな感じ。キースもミックもどうすることもできなかったことがわかる。
彼らのバイオ本には、ミックとキースがバンドを乗っ取るためにブライアンを辞めさせたような書き方をしてるものも多かったんだけど、これを見れば、バンドを続けるためにはそれしか選択肢がなかったことがよくわかる。そして、それに関するミックの本心も、今回初めて聞いたような気がするのだ。“後からすごく後悔した”っていう発言には…。ぐっときたなあ、うん…。

その後の彼らは、まるでブライアンの分まで生き急ぐかのように、急速にカリスマ性を増していく。
70年代初頭の神がかり的なパフォーマンスには圧倒されてしまうし、オルタモントの悲劇に至るまでのどうしようもない運命の激流も、これまでのドキュメンタリーにはないリアルさがあった。
そう、この映画とこれまでリリースされてきた映像との明らかな違いは、この圧倒的なリアルさではないだろうか?60年代初頭のライブの混乱ぶり、ブライアンの死の悲しさ、オルタモントの背筋も凍るような怖さ、そのどれもが昨日のことのように生々しく迫ってくる。
それから、ステージ上での彼らだけではなく、バックステージや滞在先のホテルで寛ぐ彼らの姿なんかも映る。ツアー暮らしの中、ミックとキースが一つの部屋で仲良く「テル・ミー」の原型らしき曲を作っていて、それを若きアンドリュー・ルーク・オールダムが温かく見守っている映像なんか、妙に生々しくてこれは本人たちもかなりぐっときたのではないだろうか?

ミック・テイラーもビル・ワイマンもたっぷり出ている。それに比べると、ロン・ウッドは可愛そうなぐらい出番が少ないし、80年代以降の歴史はほとんど出てこない。これは、彼らの中でも自分たちが一番輝いていた時期は70年代中期だったという思いがあるからだろう。
11月25,29日にロンドンで行う50周年ライブには、特別ゲストという形で二人が出ることが既に発表されている。彼らは、脱退した後も転がる石であり続けたってことなんだろうな。

うん、スゲエ映画だ。“DVD買うから映画はいいや…”なんて思ってる人もいるかもしれないが、この生々しさはストーンズ・ファンなら絶対に映画館で体験しておくべき。映画が終わった後、オレはブライアンの奏でる 「No Expectations」の美しいイントロが耳から離れなくなった。

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2012年4月26日 (木)

蔵出しストーンズ

73このところ、ローリング・ストーンズの蔵出しリリースからまったく目が離せないでいる。

去年の秋、ストーンズは突然専用のサイトを起ち上げて、過去のライブ音源のダウンロード販売を始めたのだ。
今のところ入手できる音源は、73年のヨーロッパツアー、81年のアメリカツアー、75年のアメリカツアーの3つ。最初に73年モノが発表されて大騒ぎになったのが去年の11月だから、半年も経たないうちに、僕らは超お宝音源を3つもゲットしてしまったことになる。さらっと書いてるけど、これってとんでもないことなのですよ…。

もともと、ストーンズは公式音源より裏音源のほうが評価が高いという変なバンドだった(苦笑)。上に挙げた3つのライブも、ファンの間では名演としてずっと語られてきたものだったのだが、公式には出てないんだから、聴こうと思ったらイケナイことだと知りつつもイケナイ店に行くしかなかったのだ。それが今や、パソコンさえあればいつでもどこでも安く手に入れられるようになった。これは画期的なことなのだ。なにより、イケナイことをしている後ろめたさが全くないってのは精神衛生上とても良い(笑)。大げさに言うと、これはロックの流通革命なのではないか?(笑)。
そう、この蔵出しビジネスは、明らかにブートレッグ業者をも意識している。それはタイトルにブートレッグで出てた時のものをそのまま使っていることからもわかる。これをやられちゃ、海賊版を作ってボロ儲けしてる業者はぐうの音も出ないだろう。ブートの存在理由は完全になくなった。
こんな展開はわずか1年前までは想像すらできなかった。いやあ~長生きはするもんだ。もし、タイムマシンで大学時代の僕にこの話をしに行ったら、きっと地団駄踏んで悔しがるだろう(苦笑)。

それにしても、こうやって改めて聴いてみると、ストーンズのプレイは時代時代でまるで違う。ちゃんとミックスされたクリアな音で聴くと、簡単なことばかりやってるのに、なんと細かいのかと感心してしまうのだ。
81
いまのところ、僕が一番よく聞いてるのが、81年アメリカツアーを収録した「Hampton Coliseum」。あーやっぱり好きだなあ~81年。73年のハードロック的な演奏も、75年の派手派手な感じも捨てがたいけど、僕はやっぱり81年の軽快さがたまらなく好きだ。チャーリーのドラムも、ビル・ワイマンのベースもシンプルの極みなんだけど、ものすごくスイング感が出てて、それがボブ・クリアマウンテンのミックスですごく聴き易くなっているのが嬉しい。
それになんつってもこのセットリストが最高。「悪魔を憐れむ歌」とか「ミッドナイト・ランブラー」とか、そういう大袈裟なヤツはあえてやらずに、「夜をぶっ飛ばせ」とか「ネイバース」とか、ひたすら小回りの利くR&Rで押しまくっている。これがすごく気持ちイイのだ。
これ、絶対狙ってやってるよ、ヤツらは。僕はストーンズのツアーには、絶対その時その時で裏テーマがあると思ってるんだけど、81年の裏テーマは“ひたすらR&RとR&Bをやる”だったんじゃないだろうか?「20フライトロック」や「ジャスト・マイ・イマジネーション」をカバーしたのもそう考えると納得がいくだろう。
高校生の頃にこのツアーの音源を初めて聴いたときは、ライトなタッチが妙に軽く感じられもした。ツェッペリンと比べるとストーンズは全然風格無いなあ~とかね(苦笑)。だけど、すぐにカッコよさに気が付いた。“あえてやってる”のだ、ストーンズは。R&Rのカッコよさってのはコレなんだ。
La
はっきり言うと「レット・ミー・ゴー」や「氷の如く」なんてのは、100年先も憶えられてる曲ではないと思う。いわゆるB級R&R(苦笑)。でも、そのB級臭さがなんとも言えずイイのだ。考えてみれば、ジョニー・サンダースの曲やイギー・ポップの曲なんて、ロック御三家の超A級曲と比べれば全部がBクラスみたいなもん(苦笑)。でも、B級R&RにはB級R&Rなりのたまらないカッコよさがある。喩えて言えば、酒飲みはいつも大吟醸ばかり飲んでるわけじゃない。ほんとの酒好きは二級酒の旨味もちゃんと知っている。そういうことに気付かせてくれたのもローリング・ストーンズだったんだなあ~って、ダウンロードした「Hampton Coliseum」を聴いていて、つくづく思った。

しかし、何度もいうようだけど、こういう時代が来るとは夢にも思わなかったなあ…。
そもそも僕は、過去の貯金にはいっさい手を付けないのがストーンズの美学だと思っていた。それが今や何が出ても不思議じゃない状態。次は81年のマディ・ウォーターズとの共演が出ることが発表されてるし、76年のネブワースやエル・モカンボ完全版なども噂されている。やると決めたらとことんやるのだ、ストーンズは。
ネット配信とCD&DVDという従来メディアを使い分けるやり方もストーンズならではだ。最近はいろんなバンドがアーカイブビジネスに手を染めているけど、ここまで徹底してやっているバンドは他にない。ストーンズが今やっていることは、キャリアの長いバンドのビジネスケースとしても、先駆的なことなのだ。

ただですね、ファンとして勝手なことを言わせてもらいますが、ちょっと出し過ぎ(笑)。嬉しいんだけど、ちょっと待て。これほど短いスパンでリリースしてくるとは思いませんでしたわ(笑)。
なにしろ、去年はCDやDVDでも「テキサス78」や「女たちデラックスエディション」が出ている。それに怒涛のライブ蔵出しだろ?これ全部を隅から隅までじっくり聴いてる人ってほとんどいないと思うんですけど(苦笑)。そんな膨大な時間、仕事人が持つのってまず無理。もうちょっと小出しにしたって誰も文句言わないと思うんだけど。ストーンズよ、何をそんなに生き急いでいる?(笑)

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2011年12月 6日 (火)

Some Girls Live in Texas 78 / THE ROLLING STONES

51zdghp4lnl_sl500_aa300_1_2 少し前まで、ストーンズは過去のアーカイヴには一切手をつけないバンドだったのだが、2年前のゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!40周年記念エディションを境に、タガが外れたようにすごいモンをどんどん出してくるようになった。今度出たのはなんと78年モノ!。EXILEの未発表曲にも驚いたけど、この「サム・ガールズ」+78年ツアーというパッケージにはかなり驚いた。

実は「サム・ガールズ」と78年全米ツアーに関しては、TVやラジオ用にかなりの音源・映像が残されている。やっぱしストーンズといえど、当時のパンク、ニューウェイヴの台頭は脅威だったんだろうな。物議をかもしたアルバムジャケットも含め、当時はかなりの危機感を持って話題作りをしていたんだと思う。
だけど、日本ではなかなかそれらに触れる機会がなかった。80年代に入ってから、NHK・FMでラジオ用ライブ音源がOAされ、ファンを狂喜させたなんてことがあったけど、映像の露出は皆無に近い状態だった。

昔、僕はストーンズのブートレッグ集めにどっぷりだった時期があるんだけど、ブート市場でも78年モノは多かった。6月4日の公演をライン録音したなんちゃらとか、デトロイト公演の放送音源をブート化したかんちゃらとかね。きっと、ちょっとしたストーンズ・マニアだったら、“ああ、あれのことね”とわかるだろう。
78年ブートの決定盤は「HandsomeGirls」っていう4枚組だ。こいつが出たのは90年代に入ってからなんだけど、既に出回っていたラジオ用音源と、それまで全く世に出てなかったテキサス州フォートワースのショーを組み合わせ、最上級の音質で収録したというとんでもないシロモノだった。リリース当初はちょっとした騒ぎになり、僕もやっとの思いで手に入れた記憶がある。だけど、これで78年モノはもうイイや…っていう気になっちゃったことも確かなんだよね。だって、これ以上の上物はもう出てこないだろうと思ったし、これだけボリュームがあれば、あと20年は楽しめちゃうわけで、なんだか高いお金で他のブツを漁る気がしなくなってしまったのだ。思えば、HandsomeGirlsは、僕がブートレッグから足を洗うきっかけにもなったブツなのであった。

そんなわけで、78年ツアーに関しては、もう出るものは出尽くしてると思ってたから、今度のリリースにはかなり驚いた。もうね、こんなちゃんとした映像が存在していたこと自体びっくり。このうちの数曲はブートで観たことがあったんだけど、数分観てると目がチカチカしちゃうようなシロモノだったんで、これはもうマスター自体が酷い状態なんだろうなと思い込んでいたのだ。

今見ると、この時期のストーンズはやっぱり独特。前後の時期、76年や81年のド派手なタッチとも違っていて、わざとB級臭さを漂わせた風なのが異常にカッコいい。
ミックのステージ衣装はほとんど意味不明(笑)。おっさん臭いベレー帽にぺらぺらの上着、ジャージみたいなパンツにテープがベタベタ。おまけにTシャツの文字は“DESTROY”ときた。いったい何を考えてるんだか…(苦笑)。上着を脱ぐと、右手にはアームカバー。これ、もしかしたらシド・ヴィシャスの包帯を真似てるのか?もう、あまりのキチガイぶりに笑うしかない(笑)。
キースはこの頃が一番カッコいいと思う。っていうか、ルックスとプレイぶりが一番釣り合ってるのがこの時期なんじゃないだろうか?そんでもって、やる気満々でばりばりギターを弾いてるから見てて嬉しくなってしまう。ドラッグ中毒の治療が終わり、ロン・ウッドという弟分を得て身も心もクリーンになってたんだろう。
ストーンズに加入したばかりのロニーは、まだ完全に子ども扱いだ(苦笑)。演奏中も再三ミックにいたぶられたりしてる(笑)。でも、プレイぶりはさすが。キースとの絡みは抜群で、出たり入ったりする2台のギターの音がが最高に気持ちイイ。キースとロニーは二人並んでステージに立ってるだけで見栄えがする。キース&テイラーだと、それぞれが自分のプレイに埋没しているから、こういう風にはならないもんなあ…。

ただ、これ、今まで正規リリースしなかった理由も何となくわかるのだ。だって、観ててかくっとくるところもけっこうあるもんね。たとえばLet it rock。セカンドバースの頭でミックの歌詞が飛ぶが、こういうのはあんまし作品として残したくないところだろう。Brown Sugerもけっこうヤバくて、イントロでキースが気の利いた(つもりの)フェイクを入れたら、チャーリーがびっくりしちゃってグダグダになりかけるのがモロわかっちゃいます。まあ、こういうのを見て喜んでるストーンズ・ファンも多いんだけど(笑)。Star Starで、本人が聞いたら怒っちゃいそうなジミー・ペイジへの当てこすりをミックが歌ってるのも、もともとこれが1回だけのOAで、作品として残すつもりがなかったからなんでしょう。

ただ、そういうことを差し引いても、やっぱり78年の演奏はスゴイ。
おまけで付いてるミックのインタビューによれば、このツアーは新曲が多かったんで、とにかくメンバー全員が間違えないように心掛けたって言ってるんだよね。まあ、おまえが言うか!ってとこもあるんだけど(笑)、確かに勢いだけじゃなくて、珍しく真剣に丁寧にやろうとしてるストーンズが感じられ、パワーと緻密さのバランスは全年代でも間違いなく最高峰だと思う。Shatterdの緻密さなんて、80年代以降では考えられないんじゃないかなあ。

しかし、こういう過去のアーカイヴ聞いてると時々ふと思うんだけど、当時実際に会場で聴いた感じはどうだったんだろう?当時のPAシステムでは、実際にはこういう音は会場で鳴ってなかったと思うのだ。
ミックス時に音の差し替えはやってないと思うんだけど、バランスや分離ぐあいなんかは当然いじってるはず。そういう意味では、これはボブ・クリアマウンテン・ミックスドの78年モノであって、当時そのままの音ではないと思っておいたほうがいいのかもしれない。ま、こんだけスゴイ映像見ちゃうと、そんなことは関係なくなっちゃうんだけどね…。

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2011年7月21日 (木)

【映画】レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー

オレ、この映画、これまでいったい何回観てるんだろう…。
「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」は、ローリング・ストーンズが81年に行った全米ツアーのライブを収録した映画だ。日本では83年に全国の映画館で公開され、当時はストーンズのライブを日本で見るのは夢のまた夢と言われていたこともあって、連日多くのロックファンが劇場に駆けつけた。

僕がこの映画の映像をはじめて観たのは、小林克也がVJをやっていた音楽番組だった。そこである週にストーンズが特集され、現地取材の様子とともに、映画のダイジェスト映像が流れたのである。ボロボロのTシャツを身にまとったキース・リチャーズが、咥え煙草で「ダイスをころがせ」のイントロを弾くシーンは、僕のその後の人生を変えた(笑)。わずか5秒ぐらいのカットなんだけど、そこにはロックンロール・バンドのカッコよさの全てが凝縮されていた。
高校生だった僕は、ビデオに録ったこの映像を何度も何度も見返した。そして、このわずかな映像から、実際のストーンズのライブがどんななのかを想像したもんだった。
地元の映画館で、実際に映画本編を見たのは、そのだいぶ後。躍動するストーンズは、僕の想像を遥かに上回るカッコよさだった。感激したなあ…。
東京に出てきてからは、映画が深夜放送で放映されたのをVHSテープに録画し、ノイズだらけになるまで見倒した。今では媒体がDVDになったけど、相変わらず年に何度かは必ず観たくなる。

そんな映画が、28年ぶりに劇場公開されることになった。久々にデカイ画面とデカイ音で、大好きな映像が見られるのだ。これは行くしかないだろう!

僕は新宿武蔵野館で映画を観た。結論から言うと、画面がデカくなったからといって、特別新しい発見があったわけではなかったし、映画館で聴く音も、思ったほど良かったわけではなかった。やっぱり当時の機材では、これが限界なんだろう。
それより、僕は映画の細部をいちいち憶えている自分自身に笑ってしまった(苦笑)。ミック・ジャガーが「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」を歌ってる時、一瞬白目をむきそうになるところとか(笑)、「リトルT&A」を唄う時、キースがギターを弾く腕を後ろに跳ね上げる時の肘の角度とか、どうでもいいような細かいところまで、ほんとによく憶えていたのだ。きっと、少年時代からあまりに何回も観ているので、脳内再生できるぐらいに映像が焼き付いちゃっているのだと思う。
だけど、それでも飽きないんだ、この映画…。展開がわかっていても、オープニングのとてつもないカッコよさにはドキドキしてしまうし、ジミヘンの「星条旗よ永遠なれ」が鳴り響く中、派手に花火が打ちあがるエンディングでは、本当にストーンズのライブを観た後のような満足感が押し寄せてくる。

改めて思う。誰がなんと言おうと、「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」は最高によくできた音楽映画なのだ。ローリング・ストーンズ自身も最高に油の乗っていた時代。つまり、この映画は最高の素材が最高の状態の時に、最高の機材とスタッフを使って撮った映画なのだ。悪いわけないじゃないか(笑)!

映画の公開から約10年後、ローリング・ストーンズは遂に日本の地を踏んだ。東京ドームで10日間行われたライブには、僕も3回足を運んだ。
ただ、夢にまで見たストーンズのライブに大興奮したのは確かなんだけど、「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」での若いストーンズが身体に沁み込んでいた僕にとっては、90年代のストーンズは風貌もサウンドも変に小奇麗になっちゃって、洗練されすぎたようにも感じたんだよなあ…。

その後、ストーンズは徐々に往年のルーズさを取り戻し、今もカッコ良さをキープしている。だけど、やっぱりバンドとしてのピークは、この映画に収められた81年頃までだったのではないだろうか?21世紀のストーンズも良いのだけれど、バンドとしては90年以降別モノになってしまったような感覚が僕にはある。
「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」は、世界最高のロックンロール・バンド、ローリング・ストーンズが最も輝いていた瞬間を記録した、奇跡のような1時間半なのである。21世紀の子どもたちが、これを見てその後の人生が変わったとしたって、僕は全然不思議だとは思わない。

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2011年5月23日 (月)

キース・リチャーズ自伝「ライフ」 / キース・リチャーズ(著)・棚橋志行(訳)

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御大キースの自叙伝。総数656ページの豪華本。昨日ようやく読み終わりました。

いや~、しかしこれはほんと面白い!これまでにもキースの自伝はいくつか出てるけど、何しろこれはキース本人が書いてるわけだから信憑性が違う。まあ、実際はキースがしゃべったことをジェイムズ・フォックスが書き取って出来たらしいんだけど。口述筆記みたいなもんだったのかな?

それにしてもキース、口の悪い人からは、どうせ70年代のことなんてラリパッパで何にも憶えてないんだろうなんて言われていたけど、とんでもない!これから読む人のためにあえて内容は書かないが、僕らがよく知ってるあんな話・こんな話から、あまり知られていない驚きのエピソードまで、いろんなことを実によく憶えている。比喩で使う言葉も意外に(?)文学的な表現が多くて感心してしまった。

読み終わって僕が強く感じたのは、キース・リチャーズという人物の圧倒的な“人間力”の強さ。
キースっていうと、日本ではデカダンな男の代表みたいに捉えるむきが多いけど、実際のキースは人並みはずれてエネルギッシュで生命力の強い人なのではないだろうか?
もちろん、本には従来のキースのイメージと合致するようなジャンキー時代のことも書かれている。実際、薬物についての記述はかなり多く、それを読む限りでは、一時期のキースが重度の薬物中毒状態だったことは疑うべくもない。しかし、キースは常にドラッグに溺れる自分自身を客観視していたようにも思える。死の淵すれすれまで行っては戻ってくるようなことも、実は冷静な頭で繰り返していたのではないだろうか。
そもそも、この人の場合は飛び道具としてクスリを使ったわけではないのだ。その逆で、ツアーが続いて日常でもぶっ飛び状態から降りられなかったから、どうにか自分を鎮めるためにドラッグに走ったようなところがある。
やっぱりスターダムのプレッシャーってのは、想像を絶するものがあるんだろう。マイケル・ジャクソン、エルビス・プレスリー、ブライアン・ウィルソン…。アメリカでスターダムにのし上がった人物は、頂点を極めた後、自己を破綻してしまう人がかなりいる。でも、キースはスターダムとプライベートにうまく折り合いをつけ、とても幸せな人生をおくっているように見えるのだ。
そのリトルヘルプとしてドラッグを使った…。なーんて言ったら、ちょっとキースの肩を持ちすぎでしょうか(笑)。

ドラッグはともかく、ここまでキースが生き延びて来られたのは、彼が“バンドの一員”であったからこそなのかもしれない。
どんなプレッシャーや障害があっても、まずはバンドの存続を第一に。それがローリング・ストーンズというバンドの基本理念。どんなに堕ちても、必ず帰れる場所としてバンドがあった…。悲しみの海に沈むことがあっても、絶対的母性としてのバンドがあった…。それは、時代や人生の荒波をも跳ね除けてしまうほど強力だったのだろう。
ストーンズという絶対的な核があったおかげで、強力なプレッシャーは分散され、キースもミックも時代の谷に落ちずに済んだ。そんなものなのかもしれないな…。

スゲエよなあ。ほんと、スゲエと思う。ロックンロールはただの玩具じゃないのだ。たかがロックンロール。だけど、やり続けることでこんなにも優雅に人生を泳いでいける。憧れちゃうよ、ほんと。
この人は、自分がファンからどう見られているのか、どうあって欲しいと思われているのかを、早くからわかっていたんだと思う。で、うまくバランスをとりながら、50年間、常にキース・リチャーズであり続けてきた。オビの文句”誰の中にもいる荒れ狂うキース・リチャーズ”と”優しさを持つ男”が一つの人格の中に同居しているのだ。奇跡だよ。こんな完璧なロックスター、そうそういない。女はもちろん、男が惚れるのも当たり前だ。

なんだか、キースの言葉を読んでたら、こっちまで元気になってきてしまった。
83年、映画『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』で、咥えタバコで“ダイスをころがせ”をプレイするこの男を見て以来、僕はずっとこの男に魅せられ続けている。これからもずっと…。キース・リチャーズ、大好きだ!

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2011年5月18日 (水)

キースの自伝、読んでます。

300 キース・リチャーズが自らの半生を語った「ライフ」。海の向こうでは昨年刊行されてたんで、日本語訳が出るのを首を長くして待ってましたが、遂に今月12日に発売になりました。僕もさっそく手に入れましたが、総数656ページという予想を超えたボリュームにまずはびっくり。
これは読むの、けっこう手強いぞ…。と思っておっかなびっくり読み始めましたが、マジで面白い!すらすらページが進みます。

感心したのは、訳された文章のテイスト。いかにもキースっぽいワイルドさとヨーロッパ的な洗練さが適度にミックスされています。洋書を訳したミュージシャンのバイオ本って、音楽をまるでわかってない人が訳すと、すごく変なタッチになるじゃないですか。“デヴィッド・ボウイがこんな安っぽい言葉遣いするか?”みたいな…(苦笑)。あまりにもイメージと違ってたり、音楽用語の誤訳が多かったりすると、ストレスが溜まりまくって、それだけで読むのが嫌になったりしますが、こいつはそういうストレスを全く感じません。実にいい感じ。
調べてみたら、訳者の棚橋志行氏ってのは、オバマ大統領の自伝なんかも訳した経験のある人なんですね。歳も50代半ばだから、世代的にもストーンズを通過してる人なんでしょう。

ただ、さすがにこのページ数ですから、なかなか読み終わんねえ(苦笑)。ま、こうしてたらたら読んでる時間が一番幸せなんだけどね…(笑)。
感想は読了後に改めて書こうと思いますが、こいつはストーンズ・ファンに限らず、70年代の英国音楽が好きな人なら絶対読んどくべきだと思うよ。とにかく面白いです!

海外でも評判は上々のよう。だけど、それに一番驚いてるのは当のキース本人みたいね。

「あのストーリーが批評家に理解してもらえた上、ほとんどの奴が好きだっていうんだから驚きだ。俺のアルバムは、そこまでいいレビューもらってないぜ」

だそうです。あはは(笑)。キース、最高!(笑)

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2011年3月10日 (木)

ドン・マツオとは何者だ!?

少し前の話になるんだけど、2月にスカパーで「STONES SUMMIT」という番組が放送された。あんまり期待せずに観たんだけど、こいつがめっぽう面白かったのだ。
これは昨年DVDでリリースされたローリング・ストーンズの「レディース・アンド・ジェントルメン 」という映像を、スカパーが日本で初めてテレビ放送することになったのを記念して行なわれた座談会だ。とは言っても、つまりはゲストが映画を観ながら、ストーンズに関するヨタ話を延々4時間くっちゃべるだけというトンデモ番組。(笑)おそらく、ストーンズファン以外は呆れて15分でチャンネル変えただろう(苦笑)。
ストーンズファンの間ではお馴染みの評論家・マイク越谷が司会を務め、出席者はかまやつひろし、鮎川誠、ダイヤモンド・ユカイなどのミュージシャン、それに元ミュージックライフの編集長で日本で初めてビートルズにインタビューした星加ルミ子さん、カメラマンの有賀幹夫さん、何故か三代目魚武濱田成夫や井上陽水の奥さん・石川セリなんかが呼ばれていた。

マイクや鮎川さんのストーンズ・ネタってのは、けっこういろんなところで披露されている。僕もそういうのは何度も目にしてるから、まあどうせ今度もいつものパターンの番組なんだろうなと思っていたのだ、最初は。ところが蓋を開けると、これまではなかなか出てこなかったネタ、それこそローリング・ストーンズというバンドへの違った見方を発見するような発言がいくつもあり、夢中になって観てしまった。

この番組をかくも面白いものにした功労者、それはドン・マツオだ!この人がストーンズの大ファンだってことはなんとなく知ってたけど、いやはや、これほどとは…。

一番印象に残ったのは、彼がキース・リチャーズの伝記に対する感想を語っていた場面。この伝記はまだ日本未発売だから、おそらくドン・マツオはこれを原文で読んだんだろう。彼は、この本は一般的なキースに対するイメージを変えてしまうかもしれないと言っていた。すなわち、日本だとキースはデカダン・ロッカーの代表みたいな言われ方をされているが、実はとても元気でエネルギー力が高い人間なのではないかと言うのだ。常人ではないほど人間力が強い男。それがキースではないかと…。
さらに付け加えてこんなことも。マイケル・ジャクソンとか、エルビス・プレスリーとか、ブライアン・ウィルソンとか、アメリカでスターダムにのし上がった人物は頂点を極めた後は何故か破綻してしまう人が多い。でも、ストーンズの面々はとても幸せな人生をおくっているように見える。それは彼らがイギリス人だからなのか、もともと持っていたパーソナリティから来るものなのかはわからないが、もしかしたらこれがバンドでやってる強みなのではないか。ストーンズという絶対的な核を複数のメンバーで共有することで、強力なプレッシャーも分散できているのではないかと言うのだ。

なるほどなあ、と思ったよ、オレは。
こういう視点はストーンズと同時代生れの評論家なんかからはなかなか生れ難い。この番組がかくも面白いものになったのは、ドン・マツオや若手ロックバンドのオカモトズ、毛皮のマリーズの志磨遼平など、これまでの同種の番組より若い層をゲストに読んだことが大きかったと思う。

ドン・マツオ率いるズボンズはアメリカでも人気があり、ライブも何度か行なっているそうだ。確かに、ドン・マツオのコメントからは、アメリカという国の空気を肌で感じた彼ならではの視点が、そこここに表れていた。とてもクレバーなミュージシャンだと思う。彼らのストーンズへの想い、音楽に向かう姿勢はとても共感できるなあ…。
ズボンズのライブは、ずーっと昔ソウル・フラワー・ユニオンと対バンした時に一度だけ観たことある。その時は引っかかるものがなくて素通りしてしまったのだが、今、僕はドン・マツオというやせっぽちの怪人と彼が率いるズボンズが、かな~り気になっている。

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2010年6月14日 (月)

メイン・ストリートのならず者<デラックス・エディション> / ローリング・ストーンズ

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正直言って、オレはこのリマスターにはあんまり期待してなかったんだ…。
そもそも、このアルバムは楽曲の良さだけじゃなく、それぞれの楽器が一塊りになったような音の悪さも逆に魅力になっているとオレは思う。モノラルみたいなモコモコの音が、キースの家の地下室で行われたというこのセッションのリアルさをより強く際立たせていると感じるのだ。これが変にすっきりした音像になっちゃったら、それはもはや「ならず者」ではないような気がする。物事はなんでもかんでもクリアにすりゃいいってもんじゃないと思うぜ。音楽も人生も混沌としてるから面白いんじゃないか?(笑)。
ただ、CD1枚丸々収録されるというボーナストラックだけは気になった。なにしろ、ローリング・ストーンズがリリース済みのアルバムに曲を追加したのは、今年になってリリースされた「ゲット・ヤー・ヤー・ズ・アウト!」40周年記念盤からで、スタジオレコーディングの未発表テイクにいたっては、50年近く活動を続けているストーンズの歴史の中でもこれが初めてなのだ。

そういうわけだから、アルバムを買ったオレはまずボーナストラックの入ったDISC2から聴き始めた。そして、びっくりして腰を抜かしそうになってしまったのである。それは、飛び出してきたミック・ジャガーの声が明らかに70年代のものではなかったからだ。一瞬、オレのCDには何かの手違いで彼らの最近の発表曲が入ってしまったのかと思ったぐらい(笑)。
慌ててライナーノーツを読んでみると、ボーナストラックのかなりの曲にはオーバーダビングが施してあることが判った。中にはメンバーだけでなく、現在のストーンズのツアーメンバーであるリサ・フィッシャーらがコーラスを被せているテイクもある。
驚いた。この力の入れようは何なんだ!オレは、このアルバムの前情報を全然チェックしていなかったから、どうせボートラって言ったって、腐るほどある未発表曲の中から適当にぶち込むんだろうぐらいにしか思っていなかったんだ(苦笑)。いやあ~ここまで緻密に作りこんだものにしてくるとは…。

オレは、これまで過去音源のリリースには消極的だったストーンズが、ここまでやったことに非常な驚きを感じている。
しかも、収録された曲のどれもが極めて完成度が高い。ボーナストラックには、純粋な未発表曲と、「メインストリートのならず者」に収録された曲の別テイクの2パターンがあるが、1曲目の「PASS THE WINE」なんて、既発の「メインストリートのならず者」に収められたどの曲とも違うタッチを感じる。っていうか、これは2010年の今、新曲としてリリースしても全然違和感ないんじゃないだろうか?
2曲目の「PLUNDERED MY SOUL」はストーンズならではの分厚い音のミディアム・ソウル。リードギターは間違いなくミック・テイラーだと思うが、今回のオーバーダブ・セッションには彼が呼ばれたという噂もあるそうで、これはひょっとすると新録かもしれない。
「FOLLOWING THE RIVER」のミックのボーカルは間違いなく新録。正直言うと、オレは最近のミックのこの“ウニャッ”っていうバラードの歌い回しがあまり好きではないのだが、これに関しては亡きニッキー・ホプキンスのピアノとよくマッチしていると思った。ニッキーは「I'M NOT SIGNIFYING」でもニューオリンズ・テイストの素晴らしいピアノを聴かせているし、やっぱりこの時期のストーンズ・サウンドに欠かせない存在だったことが改めて判る。
既発の曲も、チャック・ベリー風味バリバリの「オール・ダウン・ザ・ライン」や、キースのカントリーっぽいギターが最高でオリジナルより数段ねちっこい「Shine A Light」など、聴き所満載だ。
リマスター盤と銘打ったアルバムではあるけれど、DISC2に関して言えば、これはもう新作と言ってもいいぐらいだと思う。

おそらく、このやり方には賛否両論でるだろう。オーバーダブなんかせず、70年代当時の音をそのまま真空パックして世に出すようなやり方のほうがベターだと思う人もきっと多いと思う。
だけど、個人的にはこの方法、“全然アリ”だと思うなあ…。それどころか、このやり方は今後キャリアの長いバンドのリマスターのあり方にも、新たな一石を投じたのではないか。
プライドの高いミック・ジャガーは、埃をかぶったような音源をススばらいするだけなのは絶対嫌だったに違いない。どうせやるなら、今からでも手を入れて自分たちの満足できる作品として世に出そう。それがバンドとしての現役感を打ち出すことにもなると考えたんだと思う。そういった意味ではやっぱりこれは新譜。ミュージシャンが過去の定番曲を時代ごとにアレンジを変えて演奏していくように、1971年の音を2010年式にリメイクした新譜なんだ、これは。オレはDISC2をそう捉えた。
ただ、これは相当今の自分たちに自信がなければできないと思う。ローリング・ストーンズは、この作品で“過去の遺産を食い潰しているどっかのバンドとは違う!”という強烈な自己主張も成し得たように思う。

肝心の「メインストリートのならず者」本編のリマスターも素晴らしい出来栄えだ。何よりも素晴らしいと思ったのは、新ミックスがオリジナルの混沌とした空気を損なうことのない自然な仕上がりになっていたこと。全体的に低音を強調したり、音の定位をはっきりさせて聴き易くしたりしているが、それほどド派手なマスタリングでないことにほっとしている。これならOK。素晴らしい!

しかし、遂にやったな、ストーンズ。これで、彼らは一つのタブーを破った。膨大な過去の遺産を一般公開する準備はいつでも整ったってことだ。そういった意味で、この作品はストーンズの長い歴史の中でもかなり重要な転換期だと思う。
悪徳ジャーマネ、アラン・クラインが亡くなって足枷がなくなったのかもしれないが、これは今後も何が出てくるかわからないのではないだろうか。21世紀になっても相変わらずワクワクさせてくれるローリング・ストーンズ。彼らが元気でいてくれるだけで、人生の楽しみが何倍にも増えるような気がしてしまう。

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2010年1月12日 (火)

ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト! 40周年記念デラックス・エディション / The Rolling Stones

Msc0912151610002p1 いやあ~やっぱしカッコいいなあ、69年のストーンズ!
実は、この時期のストーンズ・サウンドはなかなか微妙なのだ。オリジナルメンバーのブライアン・ジョーンズからミック・テイラーへと、初のメンバーチェンジを経たバンドは、60年代のタイトなビートと70年代のへヴィロックの中間のようなノリを聴かせるようになっていた。この、わざと腰を屈めたようなルーズなタッチは、ストーンズの長い歴史の中でもこの時期だけのものだと思うんだ。

実は、高校生の時にこのアルバムをはじめて聴いたオレは、もったりしたビート感がどうにも好きになれなかった。その頃大好きだったストーンズのライブ盤は、何と言っても「Still Life」。あのパンキッシュなライブを先に聴いてしまうと、「ゲット・ヤー…」はどうにもゆるゆるに思えたんだよな。はっきり言うと、この遅さは単にストーンズがヘタだからだと思っちゃってました(苦笑)。
でも、90年代に入ってから、突然このテンポ感がものすごくカッコよく聴こえてくるようになったんだよなあ…。いつの頃からか、この手のルーズなビートは“スワンプ・ロック”と呼ばれるようになった。要するに、オレら世代はパンクから一回りしてまたここに戻ってきたし、デジタル世代には聴いたことのない新鮮な音として響いたってことなんだろう。
この時代のノリは、今のストーンズでも絶対に出せないと思う。2曲もチャック・ベリー・ナンバーがカバーされてるけど、テンポを遅くしているが故の、この腰のうずくようなスイング感は一体何なんだろう?正にR&Rの魔法だ。

もっとびっくりしたのは、今回はじめて世に出ることになった「放蕩むすこ」や「ユー・ガッタ・ムーヴ」。これは、今では当たり前になったアコースティック・セットの走りだともいえる。物の本でこの時期のストーンズがこういう曲をライブで演ってることを知ってはいたけど、こんなスタイルでライブが展開されているとは思わなかったので、ちょっと驚いた。
ディスク3の前座ミュージシャンの熱演集も素晴らしい。特にアイク&ティナ・ターナーのパワフルなパフォーマンスには圧倒されてしまった。

オレ、思うんだけど、どうせならこれ、ストーンズのパートは1曲目から実際のライブに忠実に再現した方が良かったんじゃないだろうか?
世間的には、ボートラを別ディスクにまとめたのは、長年の名盤としての本作の味わいを崩さなかったとして、評判がいいみたいなんだけど、オレは逆。どうせ、レギュラー盤はこれからも残るんだから、ここはひとつ、スペシャルなものとして当時の空気をそのまま再現すれば良かったと思うのだが…。

それにしても、「アンダー・マイ・サム」のこのシブさはいったい何だ?地を這うようなグルーヴを生み出すビル・ワイマンのベース、イイなあ~。映画「ギミー・シェルター」でもこの曲は演奏されていたけれど、それとこのアルバムとではかなりアレンジが違って聴こえてくるから不思議だ。
このボックスセットには、ローリング・ストーンズという、イギリス人のブルース好きが作ったマニアックな集団が、強靭なロックバンドへと変容してゆく直前の“屈み”が真空パックされていると思う。ホップ・ステップ・ジャンプの“ステップ”状態。うん、味わい深いよ、この時期のストーンズは。

それにしても、ついにストーンズもこういうリイシューをするようになったのかと思うと、なんとも感慨深い。
アンソロジー・プロジェクトにおけるビートルズや、ブートレッグ・シリーズと題したボブ・ディランのお蔵出しなど、今やビッグネームのほとんどは、過去の貯金を何らかの形で世に出す作業をしているけれど、これまでストーンズはそういうことを一切しなかった。リマスターを出すにしても、せいぜい別バージョン止まりで、未発表曲は絶対に出さない徹底ぶりだったのだ。それが、このボックスセットでついに禁を解いたわけである。
なぜ、今になってストーンズがこういったリリースをするようになったんだろう?僕は、悪徳ジャーマネとして名高かったアラン・クラインが亡くなったことが大きいと思う。ストーンズの曲の権利はすごく複雑になってて、本人たちですら自由にステージで演奏できないものがあると聞いたことがあるが、そういった諸々にアラン・クラインが関わっていたことは想像に難くない。その枷が無くなった今、やっと自由に過去の音源がリリースできるようになったということなんじゃないだろうか?

こうなると、もう何が出ても不思議じゃない。まずは、「エグザイル・オン・メインストリート」のリマスターだな。ひょっとすると、こいつも未発表曲やらライブ映像ならを詰め込んだボックスだったりして。
個人的には、今まではブートでしか聴けなかった、スティービー・ワンダーが前座を務めた72年ツアーの完全収録ライブなんかを期待したいなあ。スティービー+ストーンズで演奏された、UP TIGHT~SATISFACTIONのメドレーが高音質でリリースされたりなんかしちゃったら、もう泣いちゃうよ、オレ。

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2009年9月23日 (水)

ROLLING STONES「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!<40周年記念デラックス・エディション>」とな!?

C1039298 どうやら、ローリング・ストーンズの名作ライブアルバム、「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!」の<40周年記念デラックス・エディション>ってのが11月に出るらしい。
このアルバムはストーンズの69年全米ツアーの模様を収めたもので、11月27日と28日にマディソン・スクエア・ガーデンで行われたコンサートから曲がセレクトされている。キャリアの長いバンドだから、ライブ盤も数多いストーンズだけど、これをベストに挙げる人も多いんだよね。

オレ、実はこのアルバムの良さがわかったのって、恥ずかしながら90年代に入ってからなんだ。アルバム自体は70年に発売されてるんだけど、自分が初めて聴いたのは80年代中頃だったと思う。その時は“うわー、えらいヘタクソだなあ…”って思ったんだ(苦笑)。LOVE YOU LIVEやSTILL LIFEみたいな軽いノリがなく、引きずるような重たいビートにのせてシンプルなリフを繰り返すだけに感じ、なーんか物足りなさを覚えたんだよなあ…。

ところが、90年代に入って、周りが猫も杓子もデジタルサウンドの影響を受けた、定規で縦軸を区切ったようなチャキチャキしたビートばかりになった時代にこのアルバムを聴いたら、これがイイんですよー、すごく。
チャーリーのドラミングは今よりずっとシンプル。バタバタしたビートに少し後ろにのけぞった様なタッチでキース・リチャードとミック・テイラーのギターが絡む。ミックの声は…。やっぱ若い。若くてすごく瑞々しいのだ。
そう、ここに収められたストーンズはほんと若い。若いストーンズの若々しい演奏がたくさん入っているのだ。今聞くと、ちょっとスワンプ・ロック的なタッチも感じられるなあ…。

今度出る40周年記念エディションは、これまでのアルバムの最新リマスターに加え、「放蕩むすこ」や「アンダー・マイ・サム」、「サティスファクション」なんかの追加収録曲があるらしいのだ。それだけでも貴重なのに、更にゲスト・ミュージシャンの演奏も加えられるという。
ストーンズの前座ってのは、昔からスゴイ人たちが務めていて、そこからステップアップしていくパターンも多い。若き日のスティービー・ワンダーなんかもやってんだよね、ストーンズの前座。それは「フィラデルフィア・スペシャル」っていう有名なブートレッグに収められているんだけど、スティービーの「UP-TIGHT」に続けて「サティスファクション」が演奏されたり、とにかくすさまじい演奏なのだ。
69年ツアーでストーンズの前座を務めたのは、アイク&ティナ・ターナーとB.B. キング。きっと「プラウド・メアリー」や「エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース」なんかが収められるんだろう。もしかしたら、ストーンズとの共演もあるかもしれない。

加えてDVDもあるというから驚きだ。演奏シーンとMSGでのバックステージの様子が入るっていうんだけど、この時期のストーンズは、日本ではその全貌があまり知られていないだけに、いったい何が飛び出すのか…。

それにしても、ストーンズのアルバムで既存のアルバムに曲が加わった事があっただろうか?ちょっとオレは記憶にない。
これまで、いろんなアーティストが既存のアルバムに未発表テイクを加えた記念盤を出してきましたよね。ストーンズは頑なにそれを拒んできた。それは彼らのプライドだったのかもしれないけど、ファンとしてはやっぱり期待しちゃうわけですよ、そういうのを。なにしろ、ストックは他のバンド以上に膨大な量があるはず。これまで、ファンはそれを高い金を出してブートで聴くしかなかった。それが公式で出るっていうんなら、これはもう大歓迎なのだ。

こうなってくると、昔からマニアの要望の高かった、70年代初頭のライブとかも期待しちゃうなあ。
ローリング・ストーンズ、21世紀に入ってもがっつり楽しませてくれます。ほんと、嬉しいなあ、このリリースは!

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